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密輸オランウータン返還の背景
昨年、大阪のペットショップで発見された4頭のオランウータンは、NGOの働きかけの甲斐もなく、国内法「種の保存法」の適用がなされないまま、今年2月2日、インドネシアへ返還された。この間、第一発見者の関係機関への懸命な訴えと努力がなかったならば、警察が動き、犯人逮捕へといたる過程はより困難をきわめたことが想像される。オランウータン返還直前に行われたシンポジウムでは、主催した日本のNGO側からインドネシア政府へ次の要望がなされた。
東カリマンタンのオランウータンの分布と推定個体数
1997年から98年にかけて広範囲で山火事にみまわれた。この山火事に覆われた面積は約500万ヘクタールで、83年に発生した最初の山火事とほぼ同じ地域が焼けている。また、オランウータンの生息する森林の破壊は著しく、特に90年代の石炭開発、その他に、石油、液化ガス、ジャワ島からの移民村等の開発などによって多くの森林が生息に不適当な森林となっている。オランウータンは果物がなくなれば、木の皮を主食として生存できるので、山火事は生息にとって致命的ではないと思われる。東カリマンタンで見られるオランウータンの生息分布の後退は森林火災によるものというよりは、開発の影響によるものが大きい。生息個体数はこれまで推定数よりかなり少なく、2千から3千ではないかと思われる。 ワナリサット・オランウータン・リハビリセンター 1991年、オランウータンの保護計画の一環としてワナリサット・リハビリセンターが設立された。以来、ここに収容された個体数は99年12月までに700頭を超し、そのうち220頭近くが死亡しているので、死亡率は30パーセントを超える。約半数は東カリマンタンからの個体である。これだけの数の子供が収容されるにあたって殺された個体を加味すると、東カリマンタンの自然群から千頭をくだらない個体が間引かれたことになり、自然群の存続にとって致命的である。 リリース・ポイント(野生へ返す場所) の見直し
現在、ワナリサットでは、ベラトス山に設けられた保護林にリハビリ後の個体を放しているが、ここはもともとオランウータンの生息地ではないばかりか、本来彼らが分布している海抜500メートル以下の森林とは異なり、海抜千メートル以上ある。また、カリマンタン島内の亜種、あるいは地域個体群に関する配慮なく、すべての個体をいっしょにリリースしている。 従って、次のような見直しが必要と思われる。
長期にわたる各種開発行為によって森林の荒廃が進み、オランウータンの個体が捕獲され、海外に持ち出される背景となっている。石炭開発地で、麻酔銃によって捕獲された個体までもがワナリサットに持ち込まれており、収容されるすべての個体が母親をうしなった密猟個体とは考えにくい。このようなリハビリのあり方を再検討し、また、森林伐採を食い止める手段を早急に講じない限り、野生オランウータンの生息区域はさらに縮小し、個体数も減少の一途をたどると思われる。
野生動物は、何よりもその生息地が保護されなければ絶滅してしまいます。返還されたオランウータンの子供たちの状況は、5月30日にNHKスペシャルで放映されましたが、一度人間の手で飼育された個体は自然に帰ることが非常に難しいうえに、さらに彼らには生まれ育った森自体が失われてしまったという二重の悲劇が待ち受けています。そして、最大の悲劇は、インドネシア政府自らが、このままの情勢が続けばオランウータンは10年後に種として絶滅すると予測していることです。地球上から、このような素晴らしい生きものがいなくなってしまうことを、私たちはどうしてくい止めることができないのでしょうか。
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