ベンガルトラの薬殺に関して

１．動物取扱業に対する厳しい規制を

　日本には動物取扱業に関する規制が何もない状態です。昨年の１２月に「動管法」が改正され、その中で動物取扱業を届出制にすることが新たに決められました。当会らは、動物取扱業に対して営業停止措置を含めた許可制とするように求めてきましたが、残念ながら実現しませんでした。オランーウタンの密輸等、各地で悪質な動物取扱業の事件が噴出していますが、これは氷山の一角にすぎません。東京都は、動物の保護管理条例の改正を検討中ですが、動物取扱業に対し営業停止を含む措置を導入して改正すべきと考えます。

２．トラの飼育、繁殖、流通の実態把握を

　国内でトラは現在、日本動物園水族館協会加盟の動物園に約180頭、その他の個人施設等に約130頭が飼育されています。トラは絶滅に瀕する野生動物であり、「種の保存法」でも国内の取引が禁止されています。しかし、動物園や個人施設における繁殖や譲渡等の実態調査がなされたことはありません。動物園で繁殖させたトラの数が増えると、動物商に売られ、動物商から個人施設に行く流れはまったく不明です。このような中で、トラの骨や毛皮、剥製などが商品として流通している可能性があります。所轄官庁は、国内のトラの飼育、繁殖、譲渡等の実態を調査しこれを厳しく取り締まるべきです。

３．飼育施設規準の大幅改定を

　トラは、自分の体長に等しい約１．８メートルの檻の中に長期間入れられていたようです。トラを身動きもできないような檻の中に閉じこめることは、明らかにその習性や生態に反しており、動物虐待に相当する飼育方法です。特定動物（危険動物）に関わる保管施設の規模・構造に関する規準（昭和５１年制定）でも、トラの檻の最低基準は間口３メートル、奥行き４メートル、高さ３メートルとなっています。

　個人業者等の施設では、トラやチンパンジーなどを移動用の小さな檻で飼育する例が珍しくなく、動物の心身の健康と安全に重大な損傷を与えています。これを機会に、国は動管法改正に伴って制定する規準の中で、動物施設における福祉の規準の向上を導入すべきです。

４．安易な殺処分の問題

　トラは、所有者の意向により麻酔薬投与の後、薬殺されました。トラは飼育者に慣れていたと言われ、噛まれたことは飼育者側の過失であって、トラ自体に罪はありません。しばしば、動物が人に危害を加えた場合には即刻殺処分という報復的な対処がなされますが、今回もまた、いつ、どこの段階で、誰が薬殺の決定を下したのか、そしてそれが本当に必要不可避の措置であったのかが不明です。

　希少動物として保護されるべき動物が、事件が解明され関係者の責任が明らかになる以前に薬殺されたことに、強い疑問を覚えます。メディアも安易に「凶暴なトラ」というイメージを流さないように留意すべきです。