昨年7月、日本の三つの水族館・動物園―石川動物園、鹿児島水族館、須磨海浜公園水族館―がアラスカ沖で野生のラッコを24頭まで捕獲し、そのうちの6頭を展示用に日本に輸入するための許可をアメリカ魚類野生生物局に申請しました。
アース・アイランド研究所や地球生物会議をはじめ、日米の動物保護団体がこれに反対する意見書を同局に提出しました。また8月には、捕獲許可を申請している石川動物園は、臨時の受け入れ施設で、建設中の能登島臨海公園水族館が最終的なラッコの受け入れ施設でありながら、申請書類にはこの点がまったく触れられていないという事実も同局に報告されました。
この点を申請側に確認してほしいという要請にもかかわらず、同局は何の措置も取りませんでした。
野生のラッコの捕獲に反対する保護団体の意見書は、誰が見ても納得できる内容であり、また、政府機関に提出する公式書類に事実の歪曲があったという報告を受けたにもかかわらず、魚類野生生物局は、アメリカの情報公開法に基づいて申請についての公示をおこなってから、許可を出すまでの必要最低期限である60日後―意見書などの提出期間として30日、提出された意見書と申請書類の審査期間として30日―公聴会も行わないまま、捕獲許可を出しました。
この結果として、アメリカ海洋哺乳類保護法で禁じられている妊娠中の雌の捕獲が行われ、また、日本に輸入された6頭のうち2頭が死亡しました。6頭のラッコは10月3日、アラスカから日本に輸送されましたが、10月5日の朝、鹿児島水族館に買い取られた2頭のうち1頭が死亡しているのが発見されました。そして、石川動物園に買い取られた3頭のうち1頭も10月9日に死亡。ラッコは非常に繊細で、知性の高い生き物であり、両施設とも、長時間の輸送によるストレスが死亡の原因だと認めています。
さらに、12月29日には、石川動物園で生き残っていた雌が出産しました。ラッコの妊娠期間は8ヶ月ほどなので、捕獲時には妊娠5ヶ月程度だったことになります。妊娠中の海洋哺乳類の捕獲はアメリカ海洋哺乳類保護法で禁じられています。魚類野生生物局はこの件についても報告を受けており、速やかな調査を要請されています。
アース・アイランド研究所、国際海洋哺乳類プロジェクトのマーク・バーマン氏は今回の件について、海洋哺乳類を水族館が捕獲・購入するということは、その動物の死を早めるだけなのだから、本来の棲息地にとどめておくべきだ、ということのいい証明だと述べています。