ミツバチの減少は世界規模の現象、と国連

ALIVE海外ニュース 2011.7-8　翻訳：宮路

蜂群の謎の崩壊が世界的な現象になりつつあることを国連の科学者が明らかにした。

人間が飼養する蜂群の減少は、過去１０年、ヨーロッパやアメリカで急速化し、いまや中国や日本でもその現象が起こり、また、アフリカにおける崩壊の最初の兆候がエジプトで見え始めている、と国連環境計画(UNEP)のレポートが明らかにした。

このレポートの執筆者の中には、世界でも有数のミツバチの専門家も含まれ、ミツバチの消滅に関する厳しい警告を発している。ミツバチは、作物の花粉を媒介する存在として世界中でますます重要になっているが、人間が地球を管理する方法を根本的に変えなければ、増加しつつある世界人口を養うために必要な花粉媒介生物の衰退はこれからも続くだろう、とレポートは述べる。現在、顕花植物の減少や破壊力の大きい殺虫剤の使用から、害虫や大気汚染の世界的な普及まで、多くの要素が重なって、世界中の蜂群に打撃を与えている可能性があると科学者たちは警告する。そして、例えば、主要な顕花植物を農地の傍に植え、殺虫剤その他の化学物質の選択、撒く時期、その方法などにより配慮するなど、花粉媒介生物が住みやすいように、農業従事者や土地所有者が、生息地を回復しようという気持ちになるような動機付けが必要だという。レポートによれば、人間が管理するミツバチの巣は、安全な場所へ移すことができるが、“(花粉媒介生物の)野生人口はまったく無防備だ”という。

「人間が、花粉媒介生物も含めて自然に起因する資産をどう管理するか、あるいはどう管理し損なうかは、２１世紀における人類全体の未来をある程度左右するでしょう」と、国連事務次長で国連環境計画の代表アッヘム・シュタイナー氏はいう。「実際のところ、世界の食物の９０パーセントを供給する１００の作物種のうち７０以上はハチが受粉させます。人間は、２１世紀には自然から独立するための技術的な能力を持っているという幻想を作りあげましたが、ハチは、７０億近くの人間が暮らすこの世界で、人間が自然の提供するものにこれまでより少なくではなく、より多く依存しているという現実を明確に示しています。」

蜂群の衰退は、ヨーロッパでは１９６０年代半ばまで遡り、１９９８年以降、加速している。一方、北米では、２００４年からの蜂群の損失により、人に管理された花粉媒介生物の数は過去５０年間例のないほど減っている、とレポートは述べる。

そして今度は、中国人の養蜂家が、飼養と野生における蜂群の不可解で複雑な衰退の兆候に直面しており、蜂がいなくなり、果樹を手で受粉させなければならなかった中国の農家もいるという。

さらに、日本の養蜂家の４分の１が“最近、蜂群の突然の消失に見舞われ”、アフリカでは、エジプト、ナイル川沿いの養蜂家が蜂群崩壊症候群の出現を報告している。アフリカ大陸の他の地域からは今のところ同様の報告はない。

レポートは、以下のような要因が重なって蜂の減少を引き起こしたのではないかとしている。

* ハチに食料を提供する顕花植物種の損失を含む生息環境の悪化；
* 植物の成長に伴って植物全体に行き渡り、蜜や花粉によってハチが摂取する、いわゆる“組織的な”殺虫剤などの殺虫剤；
* よく知られるバロアダニなどの寄生虫や害虫；
* ハチが顕花植物、つまり食料を見つける能力を妨げている可能性がある空気汚染?１８００年代には８００メートル以上の距離まで届いていた植物が放つ匂いは、現在２００メートル未満しか届かない。

「この半世紀ほどの田舎や農村地帯の変化は、野生の蜂や他の花粉媒介生物の衰退の引き金となりました」と、主執筆者のひとり、スイス蜂研究センターのぺーター・ノイマン博士はいう。
「人間社会は、この不足分を補うために、“工業規模”の蜂の巣や人が管理する蜂群への投資を増やし、私たちの食物供給を維持するために蜂をトラックで農場や野原に運ぶことも行っています。さまざまな要素が、このような人工の蜂群を減少、そして崩壊し易くさせています。蜂の巣をどう管理するかについてもっと賢くならなければなりませんが、もっと重要なのは、野生の蜂の生息数を回復させるために、周囲のランドスケープをより適切に管理しなければなりません。」

２０１１年３月１０日
Independent.co.uk
http://www.independent.co.uk/environment/nature/decline-of-honey-bees-now-a-global-phenomenon-says-united-nations-2237541.html