リストの最優先は生息地の消滅と密猟のため１５０頭程度にまで減っているナイジェリア、アフィ山塊に生息するクロスリバー・ゴリラの保護だ。

　また、野生のチンパンジーも１９００年代初めにはアフリカ全土に百万頭以上いたといわれるが、このままでは２０１０年から２０２０年までに絶滅する危険性があるという。西アフリカでチンパンジーの生息数が一番多いのはコートジボアールだが、少数の、それぞれ隔離された群れで生活しているので長期的な生存の可能性はあまり有望ではない。インドネシアに生息するオランウータンの場合、状況はさらに緊迫しており１０年以内に種としての生息持続可能頭数を割る危険性もあるという。

　大型類人猿の生存を脅かしているのは、ブッシュミート・トレード、生息地の消滅、密猟、トロフィーハンティング（毛皮、角、頭などを戦利品として飾るために獲物を狩る）などだ。UNEPと共同でプロジェクトを進めているNGO関係者は、状況の改善のためには啓蒙活動が必要だという。

　ウガンダのビウィンディやキバレなどでは大型類人猿観光とでもいうようなものが盛んになり、生きたままの動物のほうが死んだものより地元社会に貴重な現金収入をもたらすようになった。しかし、ゴリラが（摂取した果物の）種を散布し、木を「剪定」するおかげで森林が再生されることを知っている人は少ない。象と同様に、大型類人猿もアフリカや東南アジアの森林の「庭師」の役割を果たしているだ。

　今、コンゴ民主共和国では鉱物のタンタライト（コルタン）発掘のために大勢の人間がカフジ・ビエガ国立公園やオカピ野生生物保護区に入り込み、そこに生息するゴリラなどの新たなる脅威となっている。

　UNEPの生物多様性スペシャリストは「大型類人猿が実践している薬草療法の重要性を考慮すれば、国連の世界保健機構 (WHO) も彼らの絶滅には危機感を持つべきだ」と述べている。

　GRASPの資金はレンジャーの装備費、寸断された生息地をつなぐ回廊作り、現地住民への啓蒙活動費などに使われる。

BBC, CNN, ロイター

ALIVE海外ニュース 2001.9-10 翻訳：宮路

　イギリスではブッシュミート密輸に関連して初の有罪宣告がなされたが、この摘発を行った担当官は、希少動物が食用に密輸されるケースが増加しており、これに対処するため、調査官の人数を早急に増やす必要があると訴えている。

　毎日ヒースロー空港経由で１０トンもの肉がイギリスに密輸されており、この中でブッシュミートの占める割合が増加の一途をたどっていると空港関係者は述べている。ヒースロー空港でこの１年間に摘発されたものの中には、あるナイジェリア人旅行者の所有とされる５６のバッグに入った２５００キロのブッシュミートや「野菜」と記された荷物に入っていたサル１５頭、アリクイ１頭、カメの足などがある。このような腐臭を放っていることが多い肉の密輸はバッグから手荷物運搬用回転コンべイヤーの上に血が滲み出して発覚することが多い。

　ヒースローでは、たった８名の間接税務検査官が、１５名の兼任検査官と共に毎年イギリスに入っていくる１２０万トンの商業貨物と８５００万個の手荷物をチェックして希少動物密輸の監視を行っている。税関検査官のひとりは「この問題は我が国で深刻化しつつあり、一般市民も関心を持つ必要がある。希少動物の肉の密輸が市民のいわば目前で起こっているのだ。ブッシュミート・トレードを摘発するためにもっと人手をつぎ込まなくてはならない。アメリカでは、５００名の魚類野生生物局職員が密輸入監視のために専属で勤務しているし、オーストラリアでも同様に対処している。ところがヒースローでは、税関職員はたった２３名で、しかもその大半は専任ですらない。取引規定に関わる他の公共機関がロンドン市内の店舗などを舞台に密輸肉の違法取引が行われている事実についてもっと知らなければいけない」といっている。

　ブッシュミートは何世紀もの間、西アフリカでは珍味とされてきたが、最近の需要の増加と海外市場の台頭は、４０種類以上の希少動物の生存を危機に陥れている。ブッシュミートという言葉はアフリカやアジアの熱帯雨林で狩猟されるすべての野生動物の肉を意味し、象からヨシネズミ、センザンコウなどまで含む。ブッシュミートは口蹄疫、炭ソ(anthrax)、エボラ菌など多数の病気に感染している可能性がある。美味しいので好まれるのではなく、このような高価な肉を食することができるほど豊かであるというステータスとしての意味が強い。

　密猟、密輸に関する中央・西アフリカ諸国の法律はほとんど機能していない。ガーナ野生生物協会は、ブッシュミートを所持していて捕まった人間の１０人にひとりしか有罪になっていないという。また、有罪となっても、たとえばセンザンコウの密猟に対する罰金は１ポンド程度だが、売れば６ポンドほどになるし、家庭ごとの平均年収が３００ポンドの国では大した収入となるため密猟があとを絶たない。

　世界動物保護協会(WSPA)は最近まとめたレポートで「この危機的状況に対する諸国政府の対応は遅く、対策は一環せず、ほとんどが功を奏していない。より効果的な対策が取られない限り、野生生物はあと数十年ですべて絶滅するだろう」と報告している。

　チンパンジー研究の先駆者グドール博士は「ブッシュミート需要の増加は、絶滅寸前まできている動物達にとって最後の一撃となる危険がある。ブッシュミートは熱帯地方全域の市場で売られており、アフリカの裕福な国外在住者のためにロンドンからニューヨークまで世界中の市場やレストランでもその数は増えつつある」という。

　また、国際霊長類保護連盟(IPPL)のスタッフは「野生動物を狩り、自分たちの食糧にしてきた現地の貧しい人々は、そういった肉が高く売れるので、今や自分たちで食べる代わりに道端で売るようになってしまった」という。

The Evening Standard

　BPRCは以前から動物保護団体の標的となっており、こういった団体はこの施設で行わ

れているすべての動物実験には代替法が存在すると主張している。諮問委員会はこの主張には反論をとなえており、慎重に検討した結果、アカゲザルを使った薬品開発などは妥当であるとしている。

　BPRCには１０００頭のアカゲザルと１００頭余りのチンパンジーを含め、１５００頭

ほどの霊長類が飼養されており、数頭のチンパンジーはエイズに感染させられているが、これから何らかの研究に使用される予定はない。委員会はまた、チンパンジーの繁殖プログラムも廃止するべきだとし、現在施設内にいるチンパンジーはオランダ国内にサンクチュアリを設立してそこで残りの生涯をおくらせるようにと提言している。

　委員会メンバーのひとり、クラーセン教授は、たとえばC型肝炎にかかった子を持つ親はワクチン開発の研究を望むだろうから、委員会はチンパンジーの引退を提言したことで批判を受けるかもしれないが、必要不可欠でない場合大型類人猿を使用した実験を行うべきではないという一般市民の意見を真剣に受け止めなければならないと判断した、と述べている。

　同委員会は原則として、チンパンジーを使用した実験は、公衆衛生に対する深刻な脅威が存在し、かつ、そのような実験が犠牲となる人命の数を大幅に削減できる、あるいはその脅威を回避できる可能性が高いという場合に限って許可されるべきという意見だ。C型肝炎に関する研究はこの定義に当てはまるものの、アカデミーはこれについても段階的に廃止すべきだとしている。

　今回の実験用チンパンジーに関するオランダの決定は、アッテンボロー卿、ジェーン・グドール、デズモンド・モリスなどが率先して展開してきたキャンペーンにとって重要な勝利となる。一方で、この決定に失望しているイギリスの科学者もいる。イギリス内務省のガイドラインは国内でのチンパンジーを使った実験に対する免許の発行を禁じているが、イギリスの科学者の中にはBPRCを含む海外の実験施設でこういった実験を行っているものもいる。

　また、オランダ政府は子どもやメスのチンパンジー４６頭ほどをヨーロッパや中国の動物園に数頭ずつに分けて送るという案を出しており、動物保護活動家達はこれに対してチンパンジーは全員同じ場所に引退させるべきであり、動物園などに送って繁殖させられた場合、余剰個体が実験施設に送られる可能性も高い、とこの案に対しては反対している。

The Independent, De Volkskrant, CEECE