大型類人猿トラストの科学者、人間の飼養下にある類人猿の福祉改善を促す
ALIVE海外ニュース 2007.7-8 翻訳:宮路
大型類人猿の知性と行動に関する先導的な専門家、大型類人猿トラスト(米アイオワ州)のスー・サヴェッジ-ランボー博士が人間の飼養下にある大型類人猿のケアと福祉を大幅に変えるようにと促している。博士は応用動物福祉科学誌に掲載した科学論文で、住居空間、物理的必要性、エンリッチメントなどをはるかに超えた大型類人猿の福祉に取り組む必要があると主張している。
博士は論文で、「これまで人間の飼養下にある類人猿の福祉を改善する方法は、社会的コンパニオン、十分なケージの広さ、新鮮な野菜や果物、変化に富む食生活、ある種の“エンリッチメント”に焦点が置かれていた。このような質の向上した環境が飼養下にある類人猿の生活を全般的に改善したのは確かだが、これまでのところ、類人猿の社会集団が十分に機能するため、あるいは飼養下に置かれていない状況において個々の精神を表現するための核をなす生理学的、心理学的、文化的事実はまったく考慮されていない」と述べている。
サヴェッジ-ランボー博士は大型類人猿トラストの主要な科学者であり、ボノボの野外研究の責任者でもある。大型類人猿トラストはアイオワ州デモインにある研究施設で、類人猿の文化、行動、知性、言語の研究に焦点を当てている。論文は「飼養下における類人猿の福祉:ある類人猿集団による別の類人猿集団に関するコメント」と題され、昨年の夏、ユタ州スノーバードでの動物行動学会の年次大会で発表されたものだ。
「私たちが類人猿をどう見るかによって、彼らをどう扱うかが決まり、彼らをどう扱うかによって、彼らが何になるかが決まる。そして、彼らが何になるかによって、私たちが彼らをどう扱うかが決まる。このサイクルを壊さない限り、私たち人間と類人猿の関係は奇妙で、風変わりで、残忍で、魅惑的ではあるが不快感を誘うものとしてこのまま続いていくのだ」
サヴェッジ-ランボー博士は初めてボノボの言語研究を行った科学者で、ジョージア州立大学の言語研究センター(LRC)で23年間研究を続けた後、大型類人猿トラストに参加。LRCでは、合成音声を備え、動物が英会話でコミュニケーションすることを可能にしたキーボードや、いくつもの異なるコンピューター化された課題を自動的に提示することを可能にした「霊長類に使い易い」コンピューターペースのジョイスティック端末など、数多くの新技術を霊長類研究に利用するための先駆的使用に貢献した。人間以外の霊長類の、符号の意味を習得し、話し言葉を理解し、構文の構造を解読し、数や量の概念を学び、複雑な知覚力を要する運動課題を実行する能力などに関してセンターで開発された情報は、霊長目に属する他の種への人間の見方を変える一因となった。
大型類人猿トラストについて
完成すれば、大型類人猿トラストは北米最大、そして世界で初めてボノボ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンという4
種類すべてを収容する大型類人猿施設となり、ここでは、認知 能力やコミュニケーション能力に関して非侵襲的な学際的研究
が行われる。大型類人猿トラストにおける科学は文化、言語、 道具、知性の起源と未来を理解しようとするものである。
大型類人猿トラストは大型類人猿に安住の場とその存在を尊重 した生活を提供し、その知性を研究し、保全を促進し、彼らに
関する他に類を見ない教育的体験を提供する。
2007年4月30日
■大型類人猿トラストのホームページ:
http://www.GreatApeTrust.org
Environmental News Network
http://www.enn.com/net.html?id=1940
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