米連邦会計検査院(GAO)、
動物への抗生物質使用に関するさらなる調査を求める
ALIVE海外ニュース 2004.8-9 翻訳:宮路
米連邦会計検査院(GAO)は、動物に特定の抗生物質を使用することにより、バクテリアの抗生物質に対する耐性を強め、人間の健康に害を与えるかどうかの確認を、より迅速に行うよう連邦緒機関に促した。
先週公表された報告書の中で、GAOは、食品医薬品局(FDA)が、動物への抗生物質の使用制限を考慮すべきかどうか決定するためのリスクアセスメントをより迅速に行うべきであり、また、GAOは、人間の健康への危険についての調査が動物に投与される抗生物質の種類や量に関するデータの不足によって足を引っ張られているため、必要な情報を収集するために米農務省(USDA)と保健社会福祉省(HHS)の協力が必要としている。
連邦政府諸機関は、抗生物質耐性の監視においてある程度前進しているが、人間の健康への危険についての調査に必要な動物における抗生物質の使用に関する重大なデータを収集していない、と報告書は述べている。
議会の調査部門であるGAOは、エドワード・ケネディ議員ら3人の上院議員の要請により一年かけて報告書を準備した。
GAOは、抗生物質耐性のバクテリアが動物から人間へと移されており、これが、人間の健康に著しい危険をもたらしているようだと結論付けている。いくつかの研究は、動物への抗生物質使用の変化と、人間におけるバクテリアの抗生物質耐性の間の関連を示す証拠を提示している。さらに、バクテリアに関する遺伝研究は、抗生物質耐性のカンピロバクター菌やサルモネラ菌が動物から人間へ移ることを確認した。多くの研究が、動物への抗生物質の使用が人間の健康に危険をもたらすことを示唆しているが、健康への影響は最小レベルであることを示す研究もいくつかある。
FDAは人間の健康の危険を決定付ける「リスクアセスメント・システム」を考案し、すでに承認されている動物用抗生物質や新しい抗生物質の承認申請を評価する際にこのシステムを使用している。 しかし、ここまでに評価された承認済みの薬はFDAが人間の健康にとって非常に重要であると考えているものではなく、また、評価を終了するのに2年以上かかっているため、人間の健康を守るための施行措置が保証されるかどうかをFDAが決定するために非常に重要な薬の評価を終了するのにかなり時間がかかる可能性がある、とGAOの報告書は述べており、FDAが動物へ使用され、人間の健康にとって重要な抗生物質の評価をより迅速に行うことを勧告している。
データの必要性に関して、GAOは、連邦諸機関が動物への抗生物質使用と関連する抗生物質耐性についての調査を拡大したが、人間の健康に対する危険を減らすための努力がどの程度有効であるかを判断するには時期早急であるという。FDA、米国疾病対策センタ(CDC)、USDAは近年、監視や動物および人間における抗生物質耐性に関する研究を増やしているが、FDAは「動物への抗生物質使用に関するデータを収集しておらず、USDAのデータ収集は少数の養豚場に限られている」ため、これらの機関が動物用に販売されている抗生物質の種類、量、使用目的(疾病治療、あるいは成長促進)、使用される動物種についての情報を収集するべきだとしている。
デンマークでは、動物に投与された抗生物質に関する詳細なデータの収集によって、科学者が人間における耐性バクテリアの影響を知り、健康の危険を最小限に抑えるための戦略を考案することができるという。GAOは、FDAとUSDAが共同で必要なデータを収集する計画を考案し、実行することを勧告している。報告書は、この計画がコストのかかるものであることを認めているが、FDAおよびUSDAの既存のプログラムを骨組みとして情報収集のためのシステムへと拡張することが可能なので、莫大な費用はかからないはずだという。
また報告書は、動物へのフルオロキノロン剤エンロフロキサシンの使用が、人間における耐性病原体の原因となったという証拠を得て、FDAが鶏へのフルオロキノロン剤エンロフロキサシンの使用を禁止しようとしてきたが、製造業界がこの動きに反発しているため、この薬は3年経った今も市場に出回っていることについても触れている。
アメリカは、食用動物への抗生物質の使用が、いくつかの主な貿易相手国とは異なる。アメリカやカナダでは成長促進のために、人体に影響を及ぼす薬品の投与を許可しているが、EUやニュージーランドではこのような薬品の使用は禁止されている。
また、EUは、2006年までに成長促進のための抗生物質の使用をすべて禁止することを計画している。こういった政策の相違は、これまでのところ米国産肉の輸出に著しい影響を与えていないが、今後はそれが変わる可能性もあると報告書は述べている。
USDAとHHSは、GAO報告書のドラフトを読み、大体において同意しているとGAOはいう。HHSの職員は、製薬会社が動物への抗生物質使用に関して最も有用なデータを持っているという。抗生物質耐性についての研究のために、製薬会社がFDAに提出しなければならないデータをより実用的な形のものにするためには、現行の法律を改正する必要があるだろうという。
2004年6月3日
Center for Infectious Disease Research &
Policy
Academic Health Center -- University of Minnesota
(http://www.cidrap.umn.edu/cidrap/content/fs/food-disease/news/jun0304resistance.html)
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