【国際】

世界動物保健機構（OIE）プレスリリース

第２回ＯＩＥ動物福祉国際会議： ＯＩＥ基準の運用

ALIVE海外ニュース 2009.1-2　翻訳：宮路

第２回OIE動物福祉国際会議は、１０月２０日から２２日にかけてエジプトのカイロで開催され、動物福祉国際基準の世界規模での実施と、この分野における発展途上国への支援について、加盟国やパートナー機関からの支持を得た。

エジプトのアミン・アバザ農務大臣は、エジプトは動物福祉に対するOIEの取り組みを積極的に支持しており、この重要な分野において国際的進歩を示す特別な催しを開催できることを栄誉に思っている、とあいさつした。

会議では、世界中の動物福祉法とその実施状況について検討し、いくつかの地域や国における問題点を特定した。OIEの動物福祉基準については、すでにコンセンサスを得ているが、基準をより効果的に実施するためにはさらなる取り組みが世界的に求められる、とOIE事務局長ベルナール・ヴァラ博士は述べた。

世界銀行の「家畜と屠畜廃棄物管理」という資料でも、同様の見解が述べられている。この資料は、多くの国では、通常、市場、輸送、屠畜場における動物福祉の実施に関する法律がないことにも触れている。また、研究によると、動物福祉管理が欠落しているのは、この問題に対する知識と公的資金の不足も一因だ。

会議では、家畜の陸路、海路、空路による輸送、食肉用の屠畜、感染症管理目的の殺処分に関する既存のOIE動物福祉基準の実施状況を検討することに加え、科学研究における基準と優先順位を将来的に設けるための準備も行った。

OIE加盟国の代表、動物福祉担当官、獣医学部学部長、国立動物福祉研究所所長、OIEのパートナー国際機関の代表、取締官、国際機関、非政府団体、農業従事者団体の代表など、４００人以上の参加者は、動物福祉に関して、OIEの追加基準と科学研究の展開が必要だと主張した。OIEが現在取り組んでいる課題には、実験用動物の福祉や野犬の頭数管理も含まれている。

＜動物福祉: 関係者全員にとっての競合的議問題＞

動物の健康は、今では、動物福祉の重要な要素として認識されており、食品産業や生産者の競争力を向上するものである。

国際農業生産者連盟(IFAP)の代表ナエン氏は、２００７年にアルゼンチンで屠畜された１７、３７０匹の動物についての研究の結果を引用したが、屠場での動物の扱いを改善することで、負傷の割合を３９％削減することができたという。つまり、全国規模にすると、食用牛肉が１４、２００トン余分に生産できたことになり、これは国際市場では２、８００万米ドルに相当する。

参加者は、特に、ますます影響力を大きくしつつある民間の動物福祉基準について、透明で、民主的で、科学的な原則に基づいた基準統一の必要性を支持した。

会議に出席した業界代表らは、異なる文化的・経済的事情による制約があることを強調したが、OIE（動物福祉）ガイドラインは、現代の動物生産形態と業務が動物福祉と互換性を保つことを確実にするために重要なものであり、動物福祉要件のための世界共通基準を有する必要性は、まさに経済活動を行う者も望むものだと同意を示した。

＜獣医療従事者が、基準を実施し、遵守を確実にするための権限を持つことが成功の鍵＞

各国の獣医療従事者が権限を持つことが成功につながる。そのためには、動物福祉基準の実施と管理の分野における法律、訓練、十分な財政的・人的資源などの適切なツールが必要だ。世界銀行の研究の結論は、OIEの姿勢と一致するもので、すべての獣医師に、動物福祉における適切な訓練を与えることを推奨している。

この会議が動物福祉への関心を高めるのに成功したのは確かだが、まだやらなければならないことはある。世界中の獣医師をはじめとする獣医療従事者、そしてそのパートナーは、動物福祉に対してこれまで以上の責任を負わなければならない、とヴァラ博士は強調する。

OIEの地域戦略は、加盟国が、地域の文化や習慣を考慮に入れながら、OIE国際動物福祉基準を実現するために取り組みを共同で行うというもので、現存の格差を是正するための積極的な一歩だ。アジアでは、最初の試みとして、そのような取り組みが、国レベルにおける動物福祉への統合的に計画されたアプローチを使用した形で行われ、成功をおさめている。OIEは、地域代表を置くことにより、すべての加盟国に技術的助言と支援を提供することを約束した。

OIEは他の動物福祉イニシアチブにも着手しており、そのなかには、すべての国において獣医学や農学のカリキュラムを充実させるための教育資源データベースも含まれている。

参考資料

・第２回OIE国際動物福祉会議はエジプトの政府、欧州委員会、および数ヶ国のスポンサーの寛大な支援によって開催された。

・第１回OIE国際動物福祉会議は、２００２年にパリで開催され、OIE加盟国が最初の国際動物福祉基準を満場一致で採択するための道を開いた。

２００８年１０月２２日
OIE Press Releases
http://www.oie.int/eng/press/en_081022.htm