地球生物会議ALIVE アライブ サイトマップアライブへのお問い合わせALIVE English site
アライブ
ALIVEトップページへ最新情報・イベント案内ALIVE BLOGALIVE資料集ALIVEビデオALIVE資料請求ALIVEリンクALIVE動画のサイトへALIVE子供向けページ
 HOME > 海外ニュース > シカ改良計画が悲劇的な疫病の原因となったのか
検索 AND OR
 
地球生物会議ALIVE紹介
野生生物
動物園
家庭動物・コンパニオンアニマル
畜産動物・工場畜産
動物実験・実験動物
生命倫理・バイオエシックス
ライフスタイル
ライフスタイル
動物を守る法律
海外ニュース
海外ニュース
ALIVE資料集・ビデオ
本の紹介
リンク
 
 
アライブ子供向けページ
アライブMOVIE 動画のページ

関連リンク

アライブ海外ニュース

CWD(シカ脳神経症):現場からのレポート :

シカ改良計画が悲劇的な疫病の原因となったのか

ALIVE海外ニュース 2002.11-12 翻訳:宮路正子

 1990年の冬、ウィスコンシン州デイン郡西部のヴァ−モントという町で地元のハンターや農民などが集まり、牡ジカを改良する方法について話し合った。そして、ヴァ−モントの北西部12平方マイルを含む地域に生息するオジロジカの群れを改良する長期的な計画がまとまった。

 その年から、狩猟の際、若い牡は狙わないようにした。3年から5年の猶予を与えれば牡ジカは体格も立派になり、枝角もみごとになり、トロフィー・ハンティングの獲物としての価値が上がる。

 改良計画の第一は選別、第二は栄養だった。「私たちは酪農家の出身だったので、そこから群を改良するアイディアを考えつきました」会合に出席していたひとりの女性はいう。「動物が自然の環境から得ていない必要栄養素は何だろうかと考えました。森林の土壌は火打ち石質で、授乳中の雌ジカや成長の早い若い牡ジカに必要なカルシウムやリンの含有量がそれほど多くありません」

 シカは羊や牛と同様に反芻動物なのだから、畜産農家が家畜にするように、シカにサプルメントを与えたら、どうだろうかということになった。

 数年のうちに成果が現れた。改良計画が効果を上げたのは明らかだ。しかし、恐ろしいことも起こり始めた。

 ミシシッピ川以東では前例のない壊滅的な脳疾病、慢性消耗病(CWD)が、ヴァーモントの12平方マイルの土地−その中には州の自然資源局(DNR)の所有地も含まれる−でウィスコンシン州自然資源局が採集した11のシカのサンプルから発見された。地元住民がシカの改良計画を行っていた地域だ。

 DNRはこの発生が地元に存在する何かに起因するものではないかと疑い、データを集め、質問をはじめた。また、最初のケースが報告された直後に問題の地域を調査し、農民とハンターから飼料を集め、さらに地元のサプライヤーから飼料を購入した。

 地元では多くの住民が積極的に餌付けをしており、DNRが集めた情報は、飼料の管理・規制を行う農務省に送られた。

 しかし、農務省では飼料がCWDに汚染されているかどうかを調べる手だてはなく、飼料中の動物由来原料が哺乳類のものなのか鳥類のものなのかを見分けることができる程度だという。

 農務省が飼料メーカーや鹿に餌を与えている人間を調べて分かったのは、どの飼料も、レンダリングされた反芻動物に由来する原料を禁止する連邦法に違反していないということだけだった。

●科学

 35年間に渡る科学研究によって、伝達性海綿状脳症(TSE)の原因は主に人間にあり、動物の行動がその感染を広げたことが分かっている。

 CWD、そしてその親戚の狂牛病や羊のスクレイピーはプリオンと呼ばれるタンパク質粒子によって引き起こされ、脳や神経の組織にはバクテリアやウィルスではなく、アミノ酸の鎖が存在する。英国で発見されたように、プリオンは、レンダリングされた動物由来原料を含む飼料を通して死んだ動物から生きている動物へと感染することがある。感染から発病までには数年かかり、研究によると、鹿では感染から徴候が見られるまでの潜伏期が1年半から5年の間だ。

 CWDはさまざまな形で広がる可能性がある。親ジカから子ジカへの産前産後の感染、また、郊外地域の拡大に伴って野生生物の生息域が狭められたところでは、感染個体の唾液がついた飼料、寝床にした場所、糞などから感染する可能性もある。また、群れがいるところではプリオンによる土壌汚染もあり得る。

 研究によってTSEプリオンがほとんど不滅であることが分かっている。プリオンは殺菌された外科器具に付着したまま生存できるほど生命力が強く、臨床研究では、殺すためには華氏680度の熱が必要とされると報告されている。また比較対照検査は、プリオンが7年、あるいはそれ以上、土壌の中で生存できることを示している。

 地元の専門家、マーシュ博士は以前、ウィスコンシン州はTSE発生の可能性が特に高いと警告し、その理由として州内に数多く動物が存在することと、レンダリングを挙げた。 博士はTSEの感染のメカニズムとその原因物質の性質を理解しようとした。 スクレイピーに感染した羊の脳から検出したタンパク質のごく小さな粒子-核酸、プリオン、ヴィリノ-について分かったのは、それがあまりに小さいので殺すことができないということだった。この粒子は高熱でも死なず、照射するにしても、まずそれを見つけなければならなかった。

 マーシュ博士と共に研究を行ったマクミラン博士はこういう。「問題の場所には確実に疾病集団が存在しているし、指針となる第一のケースも認定された。発生を地理的時間的に分析すると、感染源はひとつだと思われる」

 しかし、マクミラン博士は感染源の特定を躊躇している。それは汚染された動物由来の原料を含むシカの飼料だったのか。動物同志の接触だったのか。それともエサ場の土壌にプリオンが存在したのか。「科学は動物が汚染された土に触れて感染する可能があり、雌ジカから子ジカへの産前産後の感染する可能性があることも示している。種を超えて、羊からシカ、あるいはウシからシカへの感染も考えられるが可能性は低い。シカが感染しているシカとエサ場を共有した、あるいはレンダリングされた感染動物が含まれた飼料を食べたという実証があれば、それが感染源である可能性が高い」

●飼料

米国農務省は、早くも1991年には、レンダリングされた羊の副産物をウシに与えることについて自主的禁止措置をとっていた。そして、1997年8月4日、英国での狂牛病の発生をうけ、食品医薬品局は、反芻動物にレンダリングした反芻動物を与えることを禁止した。この規則が適用される反芻動物はウシ、ヒツジ、オオジカ、水牛、ヤギ、アンテロープ、シカだった。

 しかし、ヴァ-モントでシカの栄養補給プログラムが進行中だった1991年から97年の間、ウィスコンシンではシカの死骸や身体部分がレンダリング工場へ持ちこまれていた。工場でレンダリングされた動物は肉粉と骨粉になり、健康なシカに合法的に与えられていたのだ。 DNRの統計によれば、1994年から95年にかけての一年間だけでも、交通事故死した、あるいは捕獲された約26,500頭のシロオジカがレンダリング施設で処理された。

 匿名希望のあるウィスコンシン食肉取引協会職員は、1991年以前は、すべての動物の死骸や身体部分はいっしょにレンダリング工場に持ち込まれていたという。その後、使用できない羊の身体部分は返却されるようになったが、1997年8月までは、ウシや他の哺乳動物の身体部分は、レンダリング用にすべて同じ収納器で集められていた。

 このような、加工業界やレンダリング業界が通常的に行っている行為が、CWDの原因物質が、どのようにして動物飼料やミネラル・サプルメントに混入するに至ったかの説明になる。

 問題の12平方マイルの近くに長年暮らしているあるハンターは、1995年にマディソン郡西部の郊外にある店で「動物由来原料のシカ飼料」と書かれたラベルを見たことを覚えている。シカが汚染された飼料やサプルメントを例えば1991年から1997年の

間に与えれたとすれば、CWDの徴候はちょうど今頃表れるだろう。

 1980年代の半ば以降1997年8月4日まで、ウィスコンシンでは、レンダリングされた動物由来の乾燥物-肉粉、骨粉あるい両方を含む-を反芻動物の飼料に混ぜることは合法であり、農協や個人の飼料製造所では日常茶飯事に行なわれていた。

 レンダリングされた肉骨粉は大豆粕などと比べると廉価だという理由で飼料に使われていた。レンダリングされた肉粉は平均で50パーセントのタンパク質を、骨粉は8から12パーセントのカルシウムと4から6パーセントの燐を含んでいた。

 シカの筋肉や枝角の成長のためには、骨粉が適切なサプルメントだと見なされていた。ヴァーモントの町でシカの改善計画を話し合ったグループのひとりの女性は、肉骨粉が禁止になる以前に地元の農協で働いていたが、飼料に4パーセントの肉骨粉タンパク質を混ぜることを顧客に奨めていたし、ミネラル・サプルメントの成分表にも骨粉が入っていたという。

●DNRの調査

 地元住民やハンターと話す中で、4,5年ほど遡って病気のシカや骨と皮だけになったシカを見た、という人に出会った。DNRもこれと同じ話を聞き、対応したのだろう。マウント・ホレブ市にある鹿登録基地で、2001年の狩猟シーズンが始まるよりかなり前に採集したシカの脳のサンプルから、DNRの専門家は、少なくともデイン郡西部ではCWDが存在しているという作業仮説をたてた。

 そして、昨年の秋、ウィスコンシン州全域で行なわれたシカの脳テストでは、全サンプルの4分の1、345中82はマウント・ホレブの基地と70A管理区から集められたもので、このうち3つがCWDに感染していた。3つともヴァーモントの町の北西部、セクション19と21から来たものだった。そして、最初に陽性とされた、疫学者がインデックスケースと呼ぶものはセクション21のものだった。

 この結果をうけて、ヴァーモントの町に隣接する他の町からさらに416のサンプルを得るために今年の3月から5月にかけてシカが射殺されたが、陽性とされた18ケース中11のケース、63パーセントがヴァーモントの町の、問題の12平方マイル内のものだった。はっきりとした疾病集団の存在が確認されたのだ。

 疾病集団が認定され、DNRは疾病集団内にあるミネラル・サプルメントのエサ場を見つけ、陽性だったシカを見つけた場所と関連付けようとした。

 この春、DNR職員からミネラル・サプルメントの成分を尋ねられるまで、シカに飼料を与えることが疾病を感染させる可能があるとは考えたことがなかったし、97年になるまでミネラル・サプルメントに動物由来の原料が使われているとは思いもよらなかった。このサプルメントが何か関連があるのかもしれない、とある地主はいう。

 調査後、DNRはCWD発生調査エリアでのエサを用いた狩猟と餌付けを禁止するよう勧告し、6月25日、ウィスコンシン自然資源委員会は地元の激しい反対があったにもかかわらず、疫病を食い止めるための緊急措置として州全体でシカへの餌付けを禁止した。

 DNR職員は「エサを与えるとシカが集まるので、餌付けを禁止した。唾液を通して感染するとすれば、餌付けをやめれば感染の可能性を下げることになる。実際に起こったことを解明するには調査と時間が必要だ」と語っている。

The Capital Times


 
HOME  ALIVEの紹介  野生動物  ズー・チェック  家庭動物  畜産動物 動物実験 生命倫理 ライフスタイル 動物保護法

海外ニュース   資料集   ビデオ   会報「ALIVE」  取り扱い図書  参考図書紹介  リンク  お問い合わせ  資料請求