【WHO】
専門家ら、動物由来感染症の人間への感染を阻止するための措置を求める
ALIVE海外ニュース 2004.7-8 翻訳:宮路
5月3日から5日かけて世界保健機構(WHO)がジュネーブで開いた動物由来感染症に関する国際会議で、科学者らは、ハクビシンから感染したと考えられている重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルエンザの最近の発生など、動物から種を越えて人間に感染する新しい動物由来感染症のさらなる出現を防ぐための緊急の対策を講ずるよう各国政府に求めた。
過去十年間に出現した人間の疾病のほとんどは動物由来のもので、人間が野生動物の生息地に入り込み、野生動物との接触が増えたために、この傾向は今後も続くだろうという。
動物由来感染症の中には、人間への感染は比較的少ないものの、深刻な経済的損失やパニックを引き起こしたものもある。例えば、人間に感染して新変異型クロイツフェルト-ヤコブ病を発病させる牛海綿状脳症は、牛の大量殺処分を余儀なくし、また、鳥インフルエンザの中でも特に致死率の高いH5N1型は、1997年に香港で最初の人間の犠牲者を出した後、ベトナムとタイでも発生し、鶏の殺処分は地域の何千もの人々の生計を破綻に追い込んだ。そして、昨年のSARS発生は、旅行業界や航空業界、アジアの経済に壊滅的な影響を及ぼした。
動物由来感染症の発生に結びつく主な危険要因は、人間、特にその森林破壊、伐採、都市化による環境破壊だと、世界保健機構の動物由来感染症管理コーディネーターのフランソワ・メスリン博士はいう。同博士は、他の要因として、地球規模で疾病をまたたく間に感染させる可能性もある航空機旅行、人間へのSARS感染の原因になったと考えられている中国におけるハクビシンの食用のような食習慣があげられるという。
専門家らは、顕微鏡で病原体を分析する従来の方法より、バクテリア、ウィルス、寄生虫の分子分析などの新しい方法を含む、よりよい監視体制により、動物由来感染症の流行を阻止することができる。そのためには、獣医師、生物学者、環境保護活動家、医師らのより緊密な共同作業も必要だ。
霊長類のウィルス性疾病に由来するHIV感染症のように、人間の疾病の多くは動物から感染したと考えられている。今日では人間の疾病となっているもののほとんどが、過去には動物の疾病だった可能性は十分考えられる、とメスリン博士はいう。
2004年5月15日
British Medical Journal
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/328/7449/1158-b
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