スペインの象徴的スポーツである闘牛は、その残忍さと優美な様式で知られている。しかし、数世紀にわたって行なわれてきたこの見世物は、同じくらい強力な敵に出会ったのかもしれない。ヨーロッパの動物の権利運動という敵だ。
先日、スペインで最も格式のある闘牛の祭典でドーピングテストが初めて行なわれた。これは闘牛士に優位になるように闘牛に薬物が与えられているという批判を受けてのものだった。また、圧力と視聴率低下のため、スペインのテレビ局は闘牛の放映を取りやめた。
勢いを増しつつある反闘牛運動の活動家は、このスポーツが過去の歴史となるのは時間の問題にすぎないという。
「ヨーロッパの人々はようやく動物福祉のメッセージを受け入れ始めています」と、イギリス最大の動物の権利団体アニマル・エイドのキャンペーン担当代表ケイト・ファウラー−リーヴスはいう。
ヨーロッパの動物の権利活動家は、ここ数ヶ月の間に首尾よく一連の動物福祉政策を促進してきた。
おそらく最も強力な法律はスイスのもので、ここでは、9月1日から犬の飼い主は2部構成のトレーニングコースを自費で受講することを義務付けられる。コースには、通りで犬を適切に散歩させる方法など、動物のニーズの認識に関する理論とその実践方法が含まれる。
スイス
スイスの法律では、釣り人は、魚を人道的に釣る方法についてのレッスンを受けなければならないし、魚をペットとして飼う人は、昼夜の自然なサイクルを維持するために水槽用照明を備えなければならなくなる。
また、馬、金魚、インコ、モルモット、その他の「社会的な」動物の飼い主は、複数飼育、あるいは最低限でも同じ動物種の他個体と何らかの関わりを持たせないと、動物虐待の罪に問われるかもしれない。
スイス連邦獣医師局のスポークスマン、マルセル・フォークは、すべての種類のペットにふさわしい待遇を保証することを目指しているという。
「例えば、犬の場合、犬が飼われる状態を改善したいと思っています。また、犬による危害を減らしたいと思っていますが、きちんと飼われている犬は、ふつう危険ではありません」と、彼は電話取材で答えた。しかし、納税者のお金を浪費していると政府を非難している新聞もある。
新しい法律では、また、ブタやウシを固い床の上で飼養することはできなくなり、農業者団体は、法律のせいで国際市場における競争力が弱くなると主張している。
しかし、動物保護運動はヨーロッパ全域で定着しつつある。
◆ロシア
「ロシアでは、多くの医学校が動物の侵襲的な使用を止めたし、クロアチアでは、毛皮のための動物の繁殖禁止を含む、かなり急進的な動物保護法案が提出されている、とファウラー-リーヴズはいう。
◆オーストリア
オーストリアでは、ある動物の権利団体が、マシュー・ヒアツル・パンというチンパンジーの保護者権を得ようと、このチンパンジーを法的に人として認めるよう申し立てをしていたが、最高裁判所が今年、チンパンジーの人格を認めないと裁決した。このことは、ひとつの敗北だったが、裁判には負けても、それが事件になったこと自体、将来への期待につながる、とファウラー-リーブズはいう。
◆イギリス
もう一箇所、動物の権利問題の火付け役となっているのはイギリスだ。フランスでは人気のごちそうであるフォアグラだが、ここでは、町議会が販売を禁止するだけでなく、しゃれたレストランやデパートも販売を止め、その数は増加しつつある。フォアグラは、強制食餌させられたアヒルやガチョウから作られたレバーパテだ。イギリスでは、まだ輸入は可能だが、国内での生産は禁止されている。
世界各国での動物保護運動の進展
■イギリスでは、犬を使った狩猟は2005年に禁止された。動物の匂いを追跡するために使うことはまだ合法だが、キツネを殺すのに使うことはできない。
■中国、北京では、オリンピック大会の前にイメージを変えようとする市の努力の一部として、犬肉を提供する多くのレストランが店を閉める。
■アジアでカメの肉が大人気であるにもかかわらず、アメリカの多くの州で、カメの輸出を制限する法律を定めた。
■イスラエルではフォアグラの生産は禁止されている。アメリカのカリフォルニア州では2012年までにフォアグラの販売と生産が終了になる。
■イタリアでは、どのような方法でも、動物の生態に反する、あるいは彼らにストレスをかけるような形でテレビに使用することはできない。
■スコットランドは、16歳未満の人間に動物を販売すること、そして動物を賞品として使うこととすることを禁止した。
■;ハンガリーは最近、オーストリア、シンガポール、クロアチアに続き、野生動物をサーカスの出し物とすることを禁止した。
2008年5月10日
The Houston Chronicle
http://www.chron.com/disp/story.mpl/world/5769191.html