ALIVE海外ニュース 2001.9-10 翻訳:宮路
熱烈な支持者を持つオーガニック・スキンケア・メーカー、Dr Hauschka(ホリスティック医学に基づいて作られているドイツの化粧品。日本では販売されていないが、欧米では人気が高い)の専務取締役パーソンズ氏によると、平均的な女性は60年間で14キロもの保湿用物質を血管に取り込むという。
「お肌のお手入れに欠かせない」製品が毎年増えていくなか、私たちの体内に取り込まれる化学薬品の量や種類も増えていく一方だ。
私たちが惜しげもなく身体に注ぎかけている高価な物質が自然なものではないことは、特に優秀な頭脳の持ち主でなくてもわかるだろう。
「夏の草原」や「フレッシュ・ラベンダー」などという名前のついている製品も、その名前とは裏腹に、含まれている天然の花の量といえば高速道路のインターチェンジあたりで見られるものと同程度だろう。
けれど、私たちが自分の体内に取り入れるものに対する意識は高まりつつある。口蹄疫騒動についてあえて明るい側面をあげるとすれば、あの件以来自分が口にするものや、その産地がどこかについて、消費者が以前より関心を持つようになったことだ。
オーガニックな美しさを求めるのは、オーガニックな食生活の次にくる論理的な選択だろう。なんといっても、私たちの肌はモイスチャライザー、ファンデーション、香水、シャンプーなどの成分を文字どおり吸い取っているのだから。
これまで私たちの肌は毒素をシャットアウトし吸収しないと思われていたが、実はそうではないようだ。実際、皮膚は血管への最短ルートと見なされ、より多くの薬品が皮膚を通してして血管に送り込まれている。であれば、化粧品だけが違うはずがあろうか。
多くの人は「どうせ明日、バスに引かれて死ぬかもしれないし」的理屈に逃げ、もっと根本的な問題と比べればクレンザーや口紅の種類がどうだとかいうのは些細な問題だと思うだろう。
しかし、私達の生活すべての分野に侵入してきたかの感のある有害物質の量を考えれば、血管に入ってくる化学薬品の量を減らそうとするのは悪いことではない。
化粧品は無害ではない。そのいい例は、先ごろMovidaのヘアカラーを使ってアナフィラキシーショック(即時型過敏反応の一種)を起こし、死亡した若い母親だ。彼女の反応は極端で異常なものかもしれないが、化粧品に含まれる化学薬品が私たちの身体に影響を及ぼすということをはっきりと証明している。
「オーガニック・ビューティ」という本の著者ジョセフィン・フェアリーによると、大量生産されている化粧品の多くはGM(遺伝子組み替え)製品、たとえばトウモロコシや大豆などを原料に含んでいるという。
フェアリーは、自然なものだけを原料にした化粧品を使うためには、自分で作るのが最良の策だが、忙しくそのような時間がない人のために、市販されているものの中から自然原料を使用している化粧品を見分ける方法をアドバイスしている。
まず覚えておかなくてはならないのは、宣伝文句をそのまま鵜呑みにしないこと。
パッケージにオーガニックだの自然だのとうたっているからといってほんとうにその通りだという保証はない。成分表を見て、オーガニック、あるいは自然原料が表の末尾のほうに表示されていないか(つまり使用量がわずかだということ)確認すること。よくわからない場合は、成分表リストの原料の数があまり多くないものを選ぶのもひとつの方法だ。本当に自然なものを使おうと心がけている会社はあまりあれこれとたくさんのものを使わない。
動物実験をしている製品を避けたい場合(海外からの輸入品には動物実験をしている製品も多い)は、動物実験に反対する英国連合(BUAV)に連絡をとれば動物実験をしていない化粧品会社のリストをくれる。また、動物実験をしている化粧品会社に手紙を書き、その会社の製品を購入しない理由を知らせることも必要。
一般消費者が動物実験反対の傾向にあると化粧品会社が感じ始めなければ何も変わらない。また、オーガニック・ビューティを目指すためにはそれなりの化粧品を選ぶだけでなく、食生活にも気を配り、定期的に運動し、水分もたっぷりと摂らなくてはいけない。
また、以下の成分を含む「自然」化粧品は避けたほうがいい。
・人工着色料:発ガン物質を含むものもある。たくさんの色を使っている製品などは避けたほうがいい。
・DEA、MEA、TEA(すべてエタノールアミン類):アレルギー反応、目の炎症を起こし、髪や皮膚を乾燥させることがある。
・ホルムアルデヒド:マニキュアなど多数の化粧品に含まれる。皮膚炎を起こすことが多く、長期使用した場合の副作用について不安を持つ医師もいる。また、以下は化粧品などに使用されているホルムアルデヒド放出物質(最初からホルムアルデヒドを成分として含んでいるわけではないが、長時間経過するとホルムアルデヒドを生成する):イミダゾリディニール ユレア(imidazolidinyl urea); ディアゾリディニールユレア(diazolidinyl urea); 2-ブロモ-2-ニトロプロペイン-1, 3-ディオル(2-bromo-2-nitropropane-1, 3-diol); DMDMヒダントイン(DMDM hydantoin); クオターニウム 15 (quaternium 15)
・化粧品に含まれる合成香料:200種以上の原料があり眩暈、接触皮膚炎、重度色素沈着を引き起こす可能性がある。無香料とは化学薬品で香料を消している場合もある。天然香料、あるいはエッセンシャルオイルを香料に使用しているものがいい。
・イソプロピルアルコール:石油原料の抗菌溶剤
・メチルパラベン:最も一般的に使用されている防腐剤だが、接触皮膚炎の原因にもなる。エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベンも避けたほうがいい。
・メチルイソチアゾリノン:防腐剤として使用されるが、アレルギー反応や接触皮膚炎の原因となる。
・パラフィン:別名、アルカン。コールドクリーム、脱毛剤、アイブロウ・ペンシルなどに使用される。
・ラウリル硫酸ナトリウム:洗浄剤や乳化剤として使用されるが、肌の乾燥をさせその防御活動を妨害するので、他の薬品が浸透しやすくなる。(Birmingham
Post)
(訳者注:最近、ハムスターに噛まれてアナフィラキシーショックを起こすケースが増えているようですが、アナフィラキシーショックの原因物質としては「各種の薬物、血清、昆虫の毒、花粉などがあり、理論的には何で発生しても不思議ではない」ということで、ハムスターだけが原因となるわけではありません。諏訪邦夫、菅井直介(編):麻酔の教育と安全(第9回日本臨床麻薬学会総会記録)克誠堂、東京、1990、91ページ(名古屋大学医学部のホームページhttp://aids.med.nagoya-u.ac.jp/ksap/cm/anaph410.htmlより)