【イギリス】
ペット・パスポート制度により
海外での疾病感染で死亡する犬の数が急増
ALIVE海外ニュース 2004.7-8 翻訳:宮路
4年前に導入されたペット・パスポート制度により、それまでより多くの動物が飼い主の海外旅行に同行するようになり、それと共に海外で致命的な疾病に感染する動物が増えている。リバプール大学熱帯医学大学院は、休暇中に疾病に感染する動物の数が2002年以来倍増したと報告している。
昨年は、37頭のペットの犬、同校で検査した84件のほぼ半数がリーシュマニア症という地中海沿岸の国々でサシチョウバエが媒介する疾病に感染していた。この数字は2002年の休暇中にこの疾病に感染した犬17頭という数の2倍だ。リーシュマニア症の症状としては、体重低下、眼科疾病、腎臓障害などがある。また、この他にもバベシアやエーリキア症というダニが媒介する血液疾病や蚊が媒介するフィラリア症などもほぼ倍増している。
獣医師は、昨年、わかっているだけでも全国で約300頭の犬が外国で何らかの疾病に感染したが、それ以外にも病名不明のものや報告されていないケースが多くあるのではないかと推測している。
何百万ものイギリス人が夏休みに海外へ出かける準備をする一方で、獣医寄生虫学者ジャッキー・バーバー博士は、ペットがこれらの疾病に感染し、多くの場合、命を失うのは、飼い主にとって大変つらいこと。飼い主はこのような脅威が現実のものであることを認識しなければならない、と警告している。
ブリストル大学獣医大学院の上級講師スーザン・ショー博士は、動物はこのような感染症に対して免疫を持っておらず、また、予防接種も存在しない。そのため、ペットの飼い主が、虫除けなどの予防措置を取って、虫さされや疾病の流行を防ぐことが大切、という。
海外での疾病のほとんどは、フランス、スペイン、イタリア、ギリシアなどの地中海諸国の海岸、森林や庭で感染する。ヨーロッパ諸国と人間の熱帯病を結び付けたりしないが、動物については、まるでアフリカのような場所を旅行しているかのようだ、とバーバー博士はいう。熱帯医学大学院は主に人間の疾病の治療にあたるが、リバプール大学獣医学部と緊密に協力し、Testapetという診断方式を開発、獣医師が海外からの疾病を検知できるようサポートしている。
政府が発行するペット・パスポートは2000年にその制度が開始され、飼い主が他のヨーロッパ諸国へ渡航する際、動物がそれに同行できるようにした。この制度は北アメリカまでその適用範囲を拡大し、今年、15万の動物が海外へ渡航すると予想されている。リバプール大学のサンディ・ツリーズ獣医寄生虫学教授は、飼い主はほんとうにペットを海外旅行に連れて行く必要があるのかどうか考えるべきだという。
2004年5月16日
The Daily Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2004/05/16/npet16.xml&s
Sheet=/news/2004/05/16/ixhome.html
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