【アメリカ】
抑制が難しいアニマルホーダー(動物の過剰多頭飼育者)
ALIVE海外ニュース 2008.3-4 翻訳:宮路
始まりは、ユニオンタウンにある雑然とした様子の家から来る悪臭に対する隣人からの苦情だった。動物保護担当官たちは、家に入る前にバイオハザードスーツと呼吸用マスクを着用し、14匹の猫、6匹のフェレット、4羽のウサギ、1頭のボクサー犬、そして1匹のアカミミガメを連れて出てきた。
しかし、家の中では、糞やゴミ、がらくたにまみれて9匹の動物−うち7匹は猫−が死んでいた。
アニマルホーダーが関わる同様の事件がこの郡では年間に10件あまりある。当局では、ホーダーをどのように扱うべきかだけでなく、ホーダーをどのように定義するかさえ様々な意見がある。
アニマルホーディング研究評議会(HARC)は、マサチューセッツ州グラフトンにあるタフツ大学カミングズ獣医大学院と提携している団体で、この問題に関する研究を始めて10年になる。HARCの2006年のレポートによると、年間およそ25万匹の動物がアニマルホーダーに新たに収集されるという。
HARCのレポートはアニマルホーディングの4つの特徴を次のように定義している:
.最低限の衛生状態、居住スペース、栄養、獣医療を提供しない。
.ケアの質によって動物や人間に問題が生じていることを認識できない。
.状態が悪化していくにもかかわらず、動物の飼養を続け、その数を増やすことに執着する。
.生活状態が動物にも人間にも問題を引き起していることを否認する。
ゲイリー・パトロネック博士は、獣医師でタフツ獣医科大学院の非常勤教授であり、またボストン動物救助連盟の動物福祉・保護部の部長でもある。博士は、過去3、4年の間に連盟のシェルターがアニマルホーダーのためにおよそ100万ドルを費やしたという。この費用にはホーダーの動物の避妊去勢や他の
獣医療、そして飼養にかかる日常的なコストも含まれる。
ペンシルバニア州オハイオ郡でシェルターを運営するアニマル・フレンズでは、年間に6件ほどのアニマルホーディングに遭遇するという。
このシェルターでは、健康な猫一匹の獣医療費が365ドルから390ドル(約4万円から4万2千円)かかり、宿泊には一日10ドル(約1100円)ほどかかる。健康な犬一匹の獣医療費は444ドルから509ドル(約4万8千円から5万5千円)かかる。裁判の状況によっては、何週間、何ヶ月、中には何年もシェルターに留まらなければならない動物もいる。負傷している、あるいは病気にかかっている動物はさらに費用がかかる。
HARCによると、アニマルホーダーは3種類に分類できるという。事態を収集できなくなった飼養者、救助者、そして搾取者だ。
飼養者は、もとは十分な世話ができていたものが、状況の変化、たとえば失業や健康上の問題など、が飼養能力に影響を与え、救助者の場合は、「ノー」ということができず、飼養しなければならない動物が増えていく。搾取者は、境界性人格障害や精神分裂症などの精神的な問題がある場合もある。
アニマルホーダーの多くは、60歳以上でほとんど収入のない一人暮らしの女性という世間の固定観念に当てはまるが、HARCのレポートによれば、年齢、性別、あるいは社会経済的な境界はないという。
ホーダーの多くは、非常に不安定な環境で幼年期を過ごしており、多数の動物を収集する欲求を持っているが、これは常習的行為なのだ、とレポートを編集したパトロネック博士はいう。
シェルターのスタッフも、様々なタイプのホーダーに遭遇してきたが、その中には高学歴高所得の会社勤めの女性もいたという。
その女性が数年前に死亡したとき、飼い猫のことを心配して友人たちがシェルターに連絡してきた。友人たちによれば女性は猫を大変かわいがっていたというが、シェルターのスタッフが行ってみると、家の床は一面糞で覆われ、10匹あまりいた猫はすべて獣医療を必要としていたのに何の手当ても受けていな
かったという。
また、100匹以上の動物と暮らすホーダーもいたが、その中にはもともと動物を救い出して新しい家を見つける「救助者」だった人もいたという。
2002年1月には、暖炉の修理工から室内の状況についての連絡を受けてナンシー・クロスという人の家に行ったシェルターのスタッフは、63頭の犬、3匹の猫、一匹の亀を救出し、
裏庭に埋められていた29匹の犬の死骸を見つけた。この女性は複数の動物虐待法違反で有罪判決を受け、8327ドル(約10万円)の罰金を言い渡された。
ホーダーの多くは年配の女性だが、最近では、もっと若い人やカップルも増えており、定年退職した元学校教師の家で100匹の猫とおそらく10年ほど蓄積されてきた糞を発見したケースもあった。
ホーダーはどんな種類の動物でも飼うが、小さくて家の中に隠すことができるため、ほとんどは猫を収集する。犬を収集するホーダーは、通常、犬の吠える声に苦情をいう近所がいない郊外に住んでいる。
ペンシルバニアでは、起訴されたホーダーはペンシルバニア州統合法の動物虐待法のもとに裁かれる。この動物虐待法では、動物を虐待する、十分なスペースを与えない、暴力を行使する、世話を怠る、食物、水、住居、獣医療、あるいは清潔で衛生的な住居への自由な出入りを奪う場合、その行為を軽犯罪と見
なされる。
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違反者に対する刑罰は、750ドル(約8万円)以下の罰金と90日以下の懲役だ。
ホーダーに対する家宅捜査にはテレビカメラの眩しいライトが伴うことも多いが、西ペンシルバニア人道協会は、それよりは控えめな方法を好む。
「私たちがまず行うのは信頼を得ることです。飼い主に、今まで以上の不安を与えたくないし、失礼にならないように接したいのです。ホーダーの多くは、本当に動物のことを気にかけているし、動物を手放したくはないのです。最初は1匹か2匹飼い始め、それがだんだんと収集がつかなくなった人もいて、実
際、そのような状況に陥った人たちの多くは、私たちが援助の手を差し伸べたことに対して感謝するのです」
ある若い夫婦の場合もそうで、彼らは、猫を4、5匹しか飼っていないと当局に言ったが、室内の臭いはそれが事実ではないことを示していた。
「天井の上から音が聞こえ、クロゼットの中に跳上げ戸が見つかったので、それを開けてみると、屋根裏に28匹の猫がいました。夫婦は猫たちを愛していて、1匹も手放したくはなかったのですが、保健部に「赤札を付けられ」、猫はシェルターに収容されました」
2007年12月10日
Pittsburgh Post-Gazette
http://www.post-gazette.com/pg/07344/840488-85.stm
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