【イギリス】
より良い研究ために動物をイメージングする
ALIVE海外ニュース 2011.10 翻訳:宮路
現代技術、実験動物数の削減とデータの質の向上を可能に
科学者は、ますます非侵襲のイメージングに移行し、動物実験における'3Rs'−置き換え、苦痛の軽減、使用数の削減−を促進しようとしている。現代医学や生物学における動物の使用は不可欠だが、研究者は、使用動物数の削減や、その使用法の改善に積極的に取り組んでいる。
コンピューター断層撮影(CT)スキャンや磁気共鳴映像法(MRI)などの医療技術は、生物学に特有のイメージング技術と併用して、科学者の研究の助けとなることができる。
「すべての利用可能なテクニックを同一の動物において統合して用いることが大きな傾向となっており、これによって対象から得る情報量を増加させることができます」と、フランソワ・ラセイリーはいう。ラセイリーはガン研究UK(ガンの犠牲者を減らすことを目的とするイギリスの慈善団体)のロンドン研究所(LRI)でイメージングを専攻する生物学者だ。
「これは、動物にも科学にも有益なものです」。
ラセイリーは、先週ロンドンで行われた会議で次のように話した。動物モデルで病気の進行を研究する場合、通常、毎週のようにいくつかの実験群を犠牲にしなければならない。
しかし、イメージングを行えば、個々の動物の一生を通して病気の進行を見ることができ、その結果、使用動物数を抜本的に削減することができる。
また、イメージングによって、いくつかのバイオマーカーをただちに見ることができるので、一回の実験でより多くのことを解明できる。
LRIの研究チームはラセイリーと共同で、マイクロCTを使用して動物の肺腫瘍の検出を行っている。 また、被験動物の腫瘍を画像化するために発光するように設計された癌細胞のような光学的画像も使用している。
重要な概念は、動物における研究が臨床における治療を模倣するように、研究者が動物を患者として治療すべきだということだと、ラセイリーはいう。これには、病院で医師が使用するスキャンやイメージング技術をすべて駆使し、実験室と臨床のギャップを埋めることなども含まれる。
生体内の結核
ポートン・ダウンにある健康保護局の研究施設で働く上級免疫学者サリー・シャープも、自身の最近の研究を会議で発表した。シャープの研究は、MRIとCTスキャンを使用し、伝染病、特に結核のための薬やワクチンに関する動物モデルの有効性を向上するものだ。
これまでのところ、シャープのチームは、生体のイメージングは可能であり、感染個体から採取した組織のCTやMRIの画像が病気の可視化だけでなく、病気の進行、あるいはそれに対する生体の防御の発生程度を数値化するのにも役に立つことを示した。
「例えば、いくつかの個体のレントゲン映像とCTやMRIの画像との診断感度を比較してみましたが、レントゲンでは正常と見えているものでも、MRIやCTでは病気を見つけることができます」とシャープはいう。
今、チームは、隔離状態に置かれた感染動物から有用なイメージングができるかどうかを調べている。この研究では、シャープが密封乳児保育器になぞらえる、高性能フィルターによって換気を行う装置を使用している。この研究によって、病気の治療とワクチンの有効性について、より素早く立証できるようになるかもしれない。
「より良いデータを得ることができれば、実験を繰り返す必要性も減らすことができるでしょう。そして、より少ない数の動物からより詳しい情報を得ることも可能です。(生体において)病気を解明できれば、実験手順の洗練化による動物の苦痛の削減も著しいでしょう」とシャープはいう。
この会議は、共にロンドンに本部をおく国立動物実験代替法センター(NC3Rs)と生物学協会が開催した。NC3Rsは動物実験代替法(3Rs)の研究に資金を提供している。
2011年6月29日
Nature Online
http://www.nature.com/news/2011/110629/full/news.2011.391.html
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