動物は道徳観のある生き物
ALIVE海外ニュース 2003.7-8 翻訳:宮路
動物が利他主義だという証拠があるという。自己の利益を省みず、他の利益のために行動する動物がいるのだ。社会生活を営む動物は、人間の行動に似た、道徳の存在をうかがわせる行動を取ることがよくある。この主張には科学的根拠があり、このことは人間の動物利用にも大きく関わってくるという。
こう主張しているのはCompassion in World Farming (CIWF)という、食用として畜産動物が屠殺されることは容認するが、人道的に扱われるべきだという立場をとる動物福祉団体である。CIWFは去る5月、「動物を理解する」という動物の知覚、感情、意図をテーマにした会議を開催した。
EUは、動物が知覚のある生き物であるーある程度の認知能力を持ち、感情を有する能力があるーという概念を1997年、正式に認めている。
●議論の焦点を変える
CIWFは会議の要旨説明の中で、ある程度の道徳観、他の動物へ配慮する能力を持つ動物もいる、と述べた。群れの中で生きるためには行動の道徳律が要求され、社会生活を営む動物のほとんどは人間の道徳律に近いものを示す。動物行動学専門の動物学者は、観察、あるいは知能を調べる実験を通して、動物の多くは感じ、考える能力があると見なしている。
CIWFのデシルバ実行委員長は「動物が知覚のある生き物だということを受け入れるかどうかという社会的風潮はこの15年で大きく変化しました。この変化は人間が動物を利用する方法すべてにも大きく関わってきます。つまり、すべての畜産動物は人道的な扱いを受ける権利があるということですが、何百万という動物がこの権利を認められていないのです」という。
●強硬な反対
畜産動物は人間が認識しているよりはるかに優れた合理性と複雑な精神構造を持っているが、人間の動物に対する姿勢は文化的なものに大きく影響される。犬に対する感情とブタに対する感情を比べてみればそれがわかる、とCIWFのターナー博士はいう。
動物が知覚のある生き物であるという科学的証拠があるとする主張には批判もある。このような主張は動物の擬人化であり、人間の特徴を動物の上に投影しているだけだという。
カントリーサイド同盟(Countryside Alliance)という狩猟推進団体は、社会全般的に動物を擬人化する傾向があるようだという。まるで動物に人間と同じような感覚や感情があるかのように思ってしまうが、これは明らかにナンセンスだ、という。
●証明は不可能
しかし、動物福祉のための大学連合(UFAW)の実行委員長であり科学主任であるカークウッド博士はCIWFのアプローチを専門家として評価しており、動物が知覚のある生き物であるかどうかという議論は何世紀にも渡ってなされてきたという。博士によれば、自分以外の人間に知覚があるかどうかということすら完璧に証明することはできない、しかし知覚がないと推測するのは明らかに不合理だという。そして、科学的見解は、すべての脊椎動物に(知覚があるのではないかという)疑問の余地を与えることが正当だという主張を確認している。
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