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アライブ海外ニュース

【英国】

人間の支配の限界

記:アリソン・ヒルズ
The Guardian 2005年3月30日

ALIVE海外ニュース 2005.7-8  翻訳:宮路

 人間の動物に対する扱いは、私達の最も文明的、あるいは温情に満ちた部分ではなく、その最も選り好みをする部分を示している。
 人間が古来より持つ自由の権利が脅威にさらされる時、イギリスが少なくともある分野では以前より文明的になっていると思うと慰められる。 (犬をけしかける)クマいじめ遊びや闘鶏は、最近では誰も行わないし、キツネ狩りですら過去のものとなった。 1822年に初めての動物虐待法が制定されて以来、イギリスは世界でも最も厳しい法律のいくつかを制定してきている。動物を愛する国として、私たちは自分自身を誇りに思ってもいいはずだ。

◆極端な「動物の権利」論争

 他方で、動物の権利に関する議論はその礼儀正しさにおいてではなく、激しい敵意と双方の無理解という強烈な組み合わせで知られている。

 議論に用いられる用語も混乱を招いている。「動物の権利」という表現自体、それを口にする人によって意味するところが異なる。 動物の権利を否定することは、人間が動物に好き勝手をしていいという許可証だと考える人もいれば、動物に権利があるなら、動物を傷つけるのは決して正当化されないという人もいる。権利の話はえてして極論主義へと向かいやすい。

 権利に関する話は止め、代わりに、簡単な質問を2つほどしてみるとよい。そうしてもよい場合があるとすれば、どういう場合に、人間は動物を苦しませてもよいのか。そして、そうしてもよい場合があるとすれば、どういう場合に、人間は動物を殺してもよいのか。極論主義者は可能な限り単純な答えを好む。

 「つねにイエス」か「どんな場合もノー」だ。 しかし、そうではなく、動物を傷つけることによって、動物や人間が受ける利益が、その動物の苦しみを補うに十分な場合を除き、動物を傷つけることを拒否するという穏健な視点を選ぶことができるのは明らかだ。 また、種によって異なった扱いをする必要があるかもしれない。 動物の心が洗練されたものであればあるほど、時ならぬ死が奪うものは大きい。 ゴリラを殺すのはニワトリを殺すより悪いことなのかもしれないが、人間を殺すのは、そのどちらを殺すよりも悪いことだろう。

◆科学的根拠に基づく議論を

 あまりに多くの人々が一貫性や議論、あるいは証拠をおざなりにした動物福祉観を持っている。このような人たちは、動物がどの程度苦しむのか知っている、その動物でいるということがどういうことか想像できるから、と思っている。自分が猟犬の群れに追いかけられるのは嫌だということは想像がつくから、キツネも自分と同じように感じているに違いないと思うのだ。これは最も生硬なたぐいの擬人観だ。 想像力のみで動物がどんな食べ物を好むか知ることはできないのと同様、何が動物を苦しめる原因になるかいつも分かるわけではない。私たちが本当のことを知るためには、動物の生理と生態を研究する科学者の助けが必要だ。

 そのような研究を行う科学者を脅かすことによって、動物福祉デモの参加者は彼ら自身のキャンペーンにダメージを与えている。 もちろん、研究は責任を持って行われなければならない。 しかし、動物を理解し、動物が何を必要とし、どんなものに関心があるのかを知らずして、動物福祉の進歩は不可能であり、科学だけがこの必要な知識をもたらすことができる。

◆無視・無知を超えて

 あまりに多くの人々の動物観は広範囲な盲点によって歪められている。特に動物の苦しみが自分に利益をもたらす場合、その苦しみに直面しても故意に顔を背ける。議会では何時間も費やして、キツネ狩りで殺される数千頭のキツネについて議論したが、私たちの食物がどこから来るのかについての憂慮はほとんど聞くことがなかった。しかし、スーパーの棚に置いてあるラップで包装された鶏肉がどのようにしてそこに来たかに関心を持てば、私たちが直面している最も緊急な動物福祉問題を見つけたことになる。

 何百万羽もの鶏が小さなケージに閉じ込められ、短期間で肥育されるので自分の体重を支えきれずに骨折し、サルモネラ菌その他の病気に苦しんでいる。巨大な養鶏場で飼養されている鶏は一度も新鮮な空気を吸うこともなく屠殺される。七面鳥、ブタ、乳牛も同様にひどい状態で飼養されている。

 工場式農法はキツネ狩りより数百万も多くの動物に関わる問題だ。そして、ブロイラー鶏の長引く試練はおそらくキツネ狩りがキツネを傷つける以上にその一羽一羽を傷つけているだろう。 休日の食事にローストされた肉をほおばる人のほとんどは、工場式農法で生産された食べ物の苦しみを楽しんでいるわけではない。そのようなことはできるだけ考えないようにしているのだ。 対照的に、ハンターは獲物を追い、仕留めることを楽しんでいるかもしれないが、だからといって、狩りばかりを議論することが正当化されるわけではない。 動物福祉に関心を持つ人間なら、農業改革を最優先に考えるべきだ。私たちは、これ以上、そこで生産される食物を購入することによって、工場式農法を支えてはならない。

◆倫理的に生きること 

 人間の動物に対する扱いは、私達の最も文明的、あるいは温情に満ちた部分を示していると思いたいのだが、実際には、その最も選り好みをする部分を示している。動物が自分の目の前で苦しんでいるのを見るのは嫌だが、工場のドアの後ろで何が起こっていようと見ぬ振りをするにはやぶさかではないのだ。

 文明のもうひとつの証は、あえて自分の私利私欲の限界を超えて、宇宙の中で自分の置かれている位置についてもっと広い視野で考えようとする姿勢だ。自然界の資源を枯渇させるまで搾取してもよいのか。人間の支配に対する倫理的限界はあるのか。

このような疑問を投げかけることができるというまさしくその事実が、人間を他の動物と区別する。しかし、このような疑問に関する文明的な議論の最たる基盤-道理、議論、そして相手方のものの見方に対する敬意-が欠けている。私たちには、これまでよりきちんとやっていかなければならない責任がある。

※筆者アリソン・ヒルズはブリストル大学で哲学を教えている。
  著作にDo Animals Have Rights? がある。

2005年3月30日

The Guardian 
http://www.guardian.co.uk/comment/story/0,3604,1447866,00.html


 
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