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2015年7月25日、円山動物園において推定30歳以上の雌のマレーグマ「ウッチー」が死亡した件に関し、札幌市長と円山動物園長宛てに以下の要望書を提出いたしました。
2015年8月10日
札幌市長 秋元克広 殿 円山動物園長 田中俊成 殿
特定非営利活動法人 地球生物会議 ( ALIVE ) 〒113-0021 東京都文京区本駒込5-18-10-102 TEL:03-5978-6272/FAX:03-5978-6273 E-mail:alive-office@alive-net.net
マレーグマ「ウッチー」の死亡原因及び飼養管理体制に関する要望書
日頃からの展示動物の飼養及び保管にかかわる業務へのご尽力に敬意を表します。 当会は、環境と生命を大切にする社会の実現と動物福祉の向上を目指し、長年にわたり動物問題の実態調査及び改善提言等を行っている全国規模で活動する市民団体です。 去る7月25日、推定30歳以上の雌のマレーグマ「ウッチー」が、雄のマレーグマに激しく攻撃を受け、翌朝に死亡した状態で発見された件について、各種報道で取り上げられております。また、攻撃されている現場の動画がインターネット上で公開されたことから、多くの市民より、飼養展示に係る問題点について疑問と批判の声があがっており、当会にも通報がありました。本件および今後の飼養展示等の管理体制等につきまして、以下、強く要望いたします。 1. 負傷した動物の適切な保護を行わなかったことについて、動物愛護管理法44条2項その他の事項に違反するおそれがある事態であるという認識のもと、適切な対応をお願いいたします。 来園者が撮影したと思われる動画3本を見ると、雄のウメキチによるウッチーへの攻撃・威嚇行動は、20分以上にわたり継続しています。特に、後半にはウッチーの異常呼吸、ふらつき等が確認されており、すでに重篤な状態に陥っていたことが推測されます。 この時点でウッチーが保護・隔離されなかったことは、動物愛護管理法44条2項の「負傷したものの適切な保護を行わないこと」に該当すると思われます。 さらに、動物愛護管理法においては、「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」第5条二(ニ)『動物が疾病にかかり、又は傷害を負った場合には、速やかに必要な処置を行うとともに、必要に応じて獣医師による診療を受けさせること』、「展示動物の飼養保管基準」第3共通基準1(1)イ『傷病のみだりな放置は、動物の虐待となるおそれがあることについて十分に認識すること』、および、キ『負傷した動物〜高齢の動物については、隔離し、又は治療する等の必要な措置を講ずること』等が定められています。上記の項目について遵守されなかったことに関しても、調査、検証すべきと考えます。 2. 「同居訓練」「繁殖計画」等が適切な内容であったのかどうかについて疑問を覚えます。これらの計画については、園内の関係者だけではなく、外部の専門家等を交えて十分に検証されるべきであり、抜本的な改善をお願いいたします。 ウッチーは、推定30歳以上の高齢の雌であり、繁殖年齢を超えている個体であることを踏まえると、同居させることに意味があったのか、そもそも「他の雌とウメキチとの仲介役をさせる」ということに科学的な根拠があったのでしょうか。 また、「繁殖計画」についても、園内で検証されるだけでなく、外部の専門家(国内・国外)等の意見を聞きながら慎重に進められるべきであり、これらの計画に係る正式な文書等が存在するのか等も踏まえ、個体の福祉に配慮した計画の見直しが必要ではないでしょうか。 科学上の用に動物を用いる場合、(動物実験等)には、実験計画書の審査が行われることが通常であり、機関内部の委員会が動物の受ける苦痛や福祉について、細かいチェック行うことになっています。動物展示飼養施設の「同居訓練」や「繁殖計画」においても、機関内で十分な討議・精査が行われるべきです。 3.日常の飼養管理体制について、見直しと改善を強く求めます。また、外部の有識者・専門家との連携を強化し、動物の展示飼養ならびに繁殖について、個体の福祉を重視した手法を取り入れていただくことをお願いいたします。 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」には、第5条一の(ニ)『過度な動物間の闘争等が発生することを避けること』、「展示動物の飼養保管基準」第3共通基準1(1)のオ『展示動物の組合せを考慮した収容を行うこと』と明記されています。 動物愛護管理法及び関係法令の遵守義務は円山動物園組織全体に課せられているのであり、本件について担当飼育員だけが批判を受けたり、責任を負うような形で決着すべきでないことは当然ながら、日常の飼養管理体制や種や個体ごとの把握状況において根本的に不備がなかったかどうかを、園全体で検証する必要があると考えます。 さらに、外部との連携についても、見直しが必要であると考えます。世界動物園水族館協会(WAZA)に加盟している施設だけでも、マレーグマを飼養している施設は複数あります。野生動物の展示飼養ならびに繁殖については、国内外の飼養担当者や獣医師と連携し、それぞれの種の習性や生理、行動等について、情報交換を頻繁に行いながら、個体の健康・福祉を守ることが必要ではないでしょうか。 4. 園内における動物の生命・健康に係る危機管理マニュアルの制定を強く求めます。 また、動物の生命や身体に危険がある客観的な事態を来園者が目撃した場合の対応について、改善を求めます。 動物園では、災害時等の緊急事態、動物が逸走した場合等のマニュアルは制定されていても、動物たちが受ける危機(闘争、事故等)についての対応に関する規定について乏しい印象があります。各動物種および個体において想定される危機的状況について、有識者・専門家等の知見を参考にしつつ、緊急事態の際にどのような措置を行うか、事前にマニュアルを設けるべきと考えます。 また、来園者等が動物同士の過度な闘争や異常行動等を目撃したときに、すぐに飼育員や獣医師等の園内関係者に通報できるような工夫とその体制構築も望まれます。迅速な対応・措置によって、救われるいのちは多いことと思います。
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