2011年10月25日、文部科学省が、所轄の動物実験を行う研究機関に対して『研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針』等に関する説明会を行いました。

　この説明会は、環境省で現在行われている2012年の動物愛護法改正を意識して行われたものです。動物愛護法改正の検討課題として「実験動物関連施設の届出制・登録制の導入」が議論されています。動物愛護法は、「動物実験」を規制するものではなく、「実験動物の福祉」を実現することを目的としていますが、動物実験関係者は「法規制の強化により、科学技術、生命科学研究、先端医療が大幅に遅延の懸念がある」などと過剰な反応を示し、導入に猛反対しています。

　実験施設を届出制・登録制にしたくらいで、日本の研究が大幅に遅延するなどとは噴飯ものであることは他ならぬ実験者達がよく知っています。そもそも、現行法では、2005年にようやくわずかに第４１条の１項を加えたのみです。先進諸外国の法制度と比較すれば、何もないも同然です。

　動物実験に関わる研究機関は、なぜ、これほど自分たちが行っていることが公的に把握されることを恐れているのでしょうか？一般の目から見たらよほどやましいことをしているのではないでしょうか？

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動物の愛護及び管理に関する法律 （動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等）

第四十一条 　動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものとする。

２ 　動物を科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。

３ 　動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥つている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によつてその動物を処分しなければならない。

４ 　環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第二項の方法及び前項の措置に関しよるべき基準を定めることができる。
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文部科学省による普及啓発活動

　2005年に行われた動物愛護法の改正を受け、文部科学省は動物実験指針を策定、所轄の大学等研究機関では、自主管理により動物実験等を適正に行う体制づくりを行ってきたはずです。しかし、動物愛護法の改正を目前にして同省ライフサイエンス課が2011年に行った研究機関を対象としたアンケートでは、基本指針で定められた責務を果たしていない機関が未だ数多く存在することが明らかになりました。そこで、同課では所轄の研究機関に対し、『研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針』を遵守するよう、急きょ、今頃になって懸命に指導し始めました。
　今回、同省が定めた指針を遵守しない機関に対しては研究助成金の停止を行うとしていますが、その中にこの動物実験指針も含むとしています。


⇒文部科学省が行ったアンケートはこちら
　 第２１回動物の愛護管理のあり方検討小委員会 「実験動物の福祉」についてのヒアリング