平成21(2009)年12月14日
尼崎市長 白井 文 様
担当 尼崎市生活衛生課
尼崎市動物愛護センター
尼崎市による業者からの犬の引取りと殺処分に対して
動物取扱業に対する監視強化及び動物行政の改善を求める要望書
当会では、本年9月1日に貴市動物愛護センターの業務の一つである犬猫の引取りに関して「犬(ねこ)の引取り願」の情報開示請求を行い、9月24日に当該書類を受け取りました。
その結果を調べたところ、動物愛護センターでは、平成20年4月1日から平成21年8月までの間に、同一業者から犬122頭を引取っていたことが判明しました。
センターの事業概要によれば、飼い主からの成犬の引取り数は平成14年度は45頭までに減少したものの、平成15年度は70頭、平成16年度は214頭
に急増しています。これ以降毎年、センターは特定の動物業者から犬の引取りを続け、平成21年度においては飼い主持込みの成犬65頭のうち59頭もが当該業者からの引取りです。これは、あたかも行政が、動物業者の「不良在庫処分」を公費で行っていたという異常事態と見受けられます。(⇒尼崎市の犬猫の処分数)
当会の調査では、行政には以下の職務怠慢の事実があります。
1、安易な引取り
鳴き声、悪臭、糞の不始末その他に対する近隣からの苦情に対して、行政は、余剰な犬を引取ることで頭数を減少させることに終始し、その場しのぎの対策をずるずると続けるばかりでした。当初は行政が自ら犬を引取りに行くサービスまでしていたとのことで、安易な引取りが違法行為をはびこらせた要因となったと見受けられます。
2、安易な殺処分
業者からの引取りをした時間はすべて午前8時台となっています。尼崎市では業者から犬を引取ると、直ちに、殺処分を委託している兵庫県の輸送車に乗せるために、時間外のサービスをしていたと見受けられます。悪質業者を助けるために時間外に働き、さらに殺処分の委託費用まで支払っていたことになります。
3、市が犬の譲渡をしない理由
本来であれば、できる限り殺処分を減らし新しい飼い主への譲渡を行うべきところ、センターではこの業者からの引取犬の譲渡は一切行わず、その日のうちに兵庫県に殺処分を委託していました。業者から譲渡すると犬が売れなくなるといった要請があったのかもしれませんが、公費で処分業務を行っている行政がこれに加担するいわれはありません。そもそも兵庫県および尼崎市の動物行政においては、犬猫の生命を救う観点から一般への譲渡を促進する姿勢がないのは問題です。
4、動物取扱業の登録の問題
当該業者は、平成16年より犬を貴市に引き取らせていますが、悪質な動物取扱業が社会問題となり、平成17年に動物愛護管理法が改正されて動物取扱業者が登録制となりました。これによって行政は登録の拒否や登録の取消しをできるようになったのですから、貴市は、本来であれば当該業者に対しては施設改善や頭数減少がなされない限り、登録を認めるべきではありませんでした。
5、動物取扱業の監視指導の問題
当該業者は毎年数十頭もの犬の処分を行政に委ねながら、その一方で隣接する番地で新しい店舗を開店し、新しい名前で営業を行っていました。新規営業の場合は新たに動物取扱業の登録が必要であるのに、業者はこれを行わず、ホームページでも堂々と広告宣伝を行っていました。明らかな違法行為でありながら、行政はこれを告発することもせず、今頃になって急きょ「業の変更届」を出させているという有様です。
6、犬の登録・注射義務の指導怠慢
当該業者は、動物取扱業を始めた当初から狂犬病予防法に基く犬の登録と狂犬病予防注射をしていませんでした。本法は、業者の飼育する犬であれ猟犬であれ実験用犬であれ、生後91日以上の犬についてはすべて登録と注射をすることを義務付けています。行政はこれを長年の間放置してきたばかりか、無登録で違法状態の犬の引取りを拒否することもしませんでした。
7、化製場法違反
化製場法に基いて市街地等では犬などの一定数以上の飼育が規制されています。当該業者の店舗は住宅地の中にあり、犬の多頭飼育は禁止または許可が必要な場所となっています。これに関しても行政が指導を行わず、近隣からの苦情がありながら、改善されることなく長年の間、数百頭もの犬の飼育を黙認してきたことは問題です。
以上のような事実は、明らかに行政の怠慢ですので、貴市担当部局では速やかに以下の改善がなされるよう要望いたします。
記
1、今後、当該動物業者からの犬の引取りを行わないこと。また、業者に対して適正飼養ができる範囲の飼育頭数にさせ、過剰な繁殖は停止させ、余剰動物を作らないように徹底指導すること。どうしても飼育できなくなった場合には、新しい飼い主に譲渡するように指導すること。
2、当該業者に対し直ちに91日齢以上の全ての犬の登録と狂犬病予防注射を実施させること。
3、当該業者に対して、今後も当該地区で営業するのであれば、化製場法に従わせ頭数を減少させること。及び環境省告示「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」に従って飼育状態の改善をすすめるように指導すること。
4、上記1〜3について業者が指導に従わない場合は、措置命令を出し、それにも従わない場合は刑事処罰を求めるとともに、動物取扱業の登録取消しを行うこと。
5、現行の「犬ねこの引取り願」の書式を改め、本年2月に環境省が通知している「犬ねこの引取り申請書」を参考にして作り変え、記入事項には全て記入させること。及び、引取りを申し出る飼い主に対面して、終生飼養義務の周知徹底を啓発すること。
6、全国の自治体が実施しているように、犬ねこの殺処分を速やかに減少させることを、数値目標で表し、その達成に努めること。そのために、安易な引取りをやめ、一般譲渡を促進すること。
以 上
地球生物会議(ALIVE)
●ALIVEの要望書に対する尼崎市の回答
●尼崎市における業者からの犬猫引取り殺処分問題
●犬猫の業者からの引取りをなくすには
尼崎市動物愛護センター事業概要より
犬 |
15年度 |
16年度 |
17年度 |
18年度 |
19年度 |
20年度 |
21年度(10月末) |
捕獲頭数 |
67 |
61 |
77 |
80 |
66 |
32 |
5 |
引き取り頭数 |
成犬 |
所有者有 |
70 |
214 |
155 |
131 |
111 |
114 |
65 |
所有者無 |
8 |
6 |
6 |
3 |
22 |
61 |
29 |
負傷 |
8 |
4 |
5 |
5 |
4 |
4 |
3 |
子犬 |
所有者有 |
0 |
0 |
6 |
1 |
6 |
2 |
4 |
所有者無 |
21 |
17 |
11 |
4 |
2 |
11 |
0 |
負傷 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
返還 |
27 |
18 |
14 |
15 |
16 |
33 |
8 |
譲渡 |
3 |
3 |
3 |
10 |
15 |
17 |
7 |
殺処分 |
139 |
282 |
244 |
198 |
181 |
173 |
93 |