反毛皮キャンペーン【１】

イタリア　ＬＡＶ(動物実験反対協会）

　これは毛皮を着ている人間が感じるべき恥と、毛皮を奪われるために飼育された動物たちが被る底知れぬ苦しみとの象徴である。

　血塗られた手の横には大きく「毛皮を着ている者は手を挙げよ」と書かれ、その下に「毛皮は、美しい動物といやな人間をくるむ」という文字もある。　写真はポール・マッカートニーと故リンダの間の娘であるメアリー･マッカートニーが撮影した。２月いっぱい、このポスターはミラノ近辺の５０以上の映画館にはり出され、４台の宣伝カーが街を走った。

　マーク・グローヴァー動物尊重協会会長は、毎秒ごとに世界のどこかで動物が毛皮をとられるために殺されていると話す。年間１００億ポンドが動く毛皮の国際市場において、ヨーロッパは消費面で突出しているからこそ、このキャンペーンはＥＵ内の主要な国で開かれ、ミラノのほかにバルセロナとロンドンでも発表会が行われた。

　この困難な闘いを我々と共にするのは、女優ダニエラ・ポッジである。慈悲のかけらもなく殺される数百万匹のミンクやキツネやアーミンを救うための我々のメッセージを、すべての女性とファッション業界に届けるために彼女は喜んで肖像の使用を承諾してくれた。
　以下に彼女へのインタビューを紹介しよう。

　私は子供の頃から動物に囲まれて育ちました。今は二匹の雌犬と暮らしています。どちらも捨て犬でした。　最初のヌーヴォラ（雲）は、ラブラドールとマレンマ犬の雑種で、ローマのプリマポルタに捨てられていました。二番目のミーア（私のもの）はシェパードとコリーの雑種で、動物病院の前に捨てられていました。
　彼らより以前にはフォルトゥーナ（幸運）という名の雌犬がいました。私の最愛の存在だった彼女は共に暮らして１０年後に亡くなりました。彼女も１９８５年に拾った子でした。

　この考えは、以前私が毛皮のファッションモデルをしていた頃に徐々に生まれました。もう一つの命、つまり動物の命とはなんだろうと考えるようになったのです。
　それは身近には思えなくても、命には違いありません。
良心とすべての命への尊敬が、私が毛皮を着る仕事の場にいつづけることを出来なくさせたのです。
　毛皮は人の目には富と裕福と魅惑に映りますが、現実にはそれは死であり、血であり、暴力であり、悪業です。かつては呼吸して生きていた命、遊んだり食べたり、おそらく彼の世界について考えることもした命、ところがある日突然一片の肉にされてしまった誰かの命を着るということです。　
　私には受け入れることが出来ませんでした。
私は持っていた毛皮をすべて手放し、そのときから自分の考えを人に知らせ、相手が納得できるように説明するようになったのです。

■なぜこのキャンペーンにあなたの肖像を
提供することを決めたのですか？

　なぜなら私のような仕事をしている者は、人気や肖像や思想といったものを他者のために、とりわけ最も弱い者や話す力を持たない者のために使うべきだと信じているからです。
　ＬＡＶの活動だけではなく、子供たちやお年寄りを助ける活動や、孤児院を建てるための資金集めなどにも私は関わっています。人種差別、移民排斥などとも闘っています。　いずれにしても動物たちは最も弱い存在です。なぜなら人間と話すことができず、人間から身を守れないからです。哀れみの心をもたず虐殺しようとする人間たちに対して小さき彼らはどうすることができるでしょう。

　いつも考えてみます。
　もしも私が犬や猫だったら、または貴重な動物だったら、そして誰かの身体をくるむ毛皮にされるために殺されたら、と。同様に私は子羊を食べません。また、伝統を守るためだけに復活祭でなされる虐殺にも抗議します。
ふちに毛皮のついた衣料を作ったりして再び毛皮を流行させようとしているデザイナーたちの試みについてどう思いますか？今やジーンズにもミンクの毛皮が使われてますが･...。

　絶対に毛皮を使わないように人々を説得できると考えることは夢想だと思います。

　それに今はうわべだけの時代、消費の時代です。すべては表面的なイメージにたよっています。私のイメージについて言えば有名であること、お金持ちだといこと、いい洋服を着ているということ。　つまり魂の価値よりもお金の価値に頼る社会です。内面の追求はもはやなく、私の価値は自分の中身だと主張したいと思う人もいません。デザイナーはその傾向に追従します。
　私はこのような流行をとても貧しくあさましいものだと思います。同じ意見の人も多いのではないでしょうか。

■もし、映画などの中で、毛皮を着るように
要求されたら、どうしますか？

　やりません。いつも最初に言うようにしています。毛皮を着ないと宣言してから何年もたっています。

　数年前、広告会社が私に多額の報酬と共に申し出てきたことが２回ありましたが、引き受けませんでした。興味ありません。私は終始一貫しています。　すると人々は私を革のベルトや靴を身につけているといって非難します。その通りです。たぶんこうして闘いながらも私は多少の矛盾と弱さを持っているのです。
　革製でない靴やエコロジー素材を見付けるのが難しいせいもあります。たぶんイタリアはこの方面でまだまだ成長しなければならないのでしょう。もしも明日にでもデザイナーたちがふちに毛皮をあしらう代わりに、動物たちを殺さなくてすむバッグや靴やベルトのための素材を見つけようとするなら、イタリアは偉大な国になるでしょう。でもそれは困難なことだと思います。

■最近、時代はエコロジーの方向に向かっているようです。
布製のバッグが沢山売られています。でもこれは
一つの流行に過ぎないのかもしれませんね？

　その通りです。本当の良心そのものから来ているものではありません。「今の流行はこれ。」だからです。
　ですが、私に言わせれば、こういう信念は時間をかけて内面から形成されるべきもので、誰かがこれが正しいと言ったからといってそれだけでは不十分なのです。

■動物を主人公にした映画に出演したいと思いますか？

　動物の世界を描いたＴＶシリーズの脚本を書いた事があります。実現されるといいのですが。
　私は屋外で自然に触れることが大好きです。犬を散歩に連れて行くときは、公園に行きます。狭い道でアリの群れを踏んでしまう事を避けるためです。巣に運ぶためにパンくずを集めているアリが、大きな運動靴をはいた恐ろしい足に突然踏み潰されバラバラにされることを思うと悲しくなります。切り花を贈ることもしません。鉢植えの植物なら生き続けられます。クリスマスツリーのための木を切り倒すことにも反対です。森を破壊するばかげた行為です。