八幡平クマ牧場の問題に関するALIVEの見解
2012年4月27日
2012年4月14日、茨城県において、動物販売業者のもとで飼育されていたアミメニシキヘビ(特定動物)が、業者の親族を襲い死なせる事故が起きました。そして、4月20日、秋田県の八幡平クマ牧場において、施設を脱走したヒグマにより従業員二名が襲われて死亡し、クマ6頭が射殺されるという事故が起こりました。相次いで起きたこのような痛ましい事故は二度と起こしてはなりません。事故の再発防止対策、および当面の課題について、当会は以下のような見解を表明いたします。
1.動愛法改正で、特定動物の飼養許可の規制強化を
動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護管理法)において、危険な動物として指定されている動物(特定動物)は、飼育が許可制となっています。しかし、この特定動物の飼養許可制度が「ザル法」であり、抜け穴が多く十分に機能していないことが問題で、今回のような人身事故を招く一因ともなっています。
現在、まさにこの動物愛護管理法の改正手続きの最中で、2010年より環境省が検討会を設置して改正事項のとりまとめを行い、2012年より議員立法による改正手続きに移行し、与野党内で検討が行われている最中です。このような悲劇の再発防止のためには、特定動物の飼養に対する厳しい法規制が急務です。当会では、特定動物にかかる法改正案を提案しているところです。
【参照(HP)】
◆ 特定動物(危険動物)の飼育許可に対する規制強化についての提案
http://www.alive-net.net/law/kaisei2012/tokutei_kisei.htm
◆ 中央環境審議会「動物愛護管理のあり方検討小委員会(第22回)議事録」(特定動物に関する議論)
http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-22a.html
2.クマ牧場の閉園と残された動物の措置について
八幡平クマ牧場の所有者は同施設を閉園するとしており、今後残されるクマをどうするかが緊急の課題となっています。所有者には刑事責任が問われており、最早管理を続ける経済的能力もないとのことです。施設は極度に老朽化し安全面に問題があるばかりでなく、給餌給水や清掃等の基本的な世話が困難となりつつあるとのことです。
同牧場では動物愛護管理法で義務付けられている飼養管理台帳を作成しておらず、個体情報を知る従業員もいなくなったことから、さし当たっては直ちに行政や獣医師、専門家によるクマの個体識別(年齢、性別など)や健康状態のチェックが必要です。それに基づき、施設の空きがあるなどして受け入れ可能な譲渡先(現在の施設よりはよい施設)を探す必要があります。
ちなみに、2004年に閉園した北海道の定山渓クマ牧場では、クマの受け入れ先を国内外に当たりましたが見つからず、営業当時もクマの健康や福祉、衛生面に大きな問題がありましたが、閉園後はよりいっそう劣悪な飼育環境に置かれたまま、まさに「飼い殺し」の状態となっています。
【参照(HP)】
◆ 閉園した定山渓クマ牧場の現状と問題点(2011年10月)
http://www.alive-net.net/zoocheck/kumabokujou/images/jouzankei_report.pdf
◆ 八幡平クマ牧場の問題(2012年4月)
http://www.alive-net.net/zoocheck/kumabokujou/kuma-hachimantai3.htm
3.参加と連携による問題解決の必要性
特定動物を多数飼育している施設が閉鎖する場合、残される動物をどうするかという問題が発生します。犬や猫などの多頭飼育者が飼育困難となり所有権放棄する事件はこれまでも全国各地で起こり、近隣住民や行政などを悩ませる問題となっていますが、同じことは特定動物の場合にあっても起こりえるのです。今後、法改正により飼育の規制を強化することで、このような事態を最大限防止するべきであることは言うまでもありません。
クマ牧場については、管理能力のない経営者のみならず、飼養許可を定めた法律、許可を出してきた行政、クマの多頭飼育や不自然な飼い方に疑問を持たず、クマが物乞いをする姿などを見て楽しむ一般市民にも問題があると言えるでしょう。その意味では日本社会に突きつけられた責任問題ということもできます。(注)
八幡平クマ牧場に残されたクマたちの生死については、所有者、行政、獣医師、専門家、市民等、さまざまな関係者が集まって知恵を出し合う必要があるため、当会では多くの主体の参加による緊急対策会議を持つことを呼びかけています。このような状況下で、どのような選択肢があり、何がよりよい方法なのか、多くの人々が自ら考え、社会的な合意形成をはかることで、動物飼育の責任と動物福祉への理解が得られることを切に願っています。
(注)
(1)野生のクマは、幼い子連れの母クマ以外は単独行動で暮らし、餌を求めて毎日数十キロも歩くこともまれではない。クマを複数頭、同じ檻やピット(コンクリートの囲い)の中で飼育することはクマの習性や生態に反し、心身のストレスから異常行動を誘発させている。
(2) クマ牧場では、日中餌を与えず、観光客が買って投げ与える餌に依存するようにさせられている。そのため餌を巡ってクマ同士の争いが起こったり、観光客に向かってクマが手を差し出したり、立って物乞いをする様子が見られるようになる。
(1)(2)のいずれにおいても、クマにとっては虐待飼育であるばかりでなく、観光客や一般市民に対してクマの生理、習性、生態についての誤った情報を与えるものとなっている。
クマ牧場、特定動物の問題については、ぜひ、以下をご覧下さい。
<こちらもごらんください>
●日本のクマ牧場の実態調査レポート
●日本のクマ牧場を実態を指摘したWSPAのキャンペーンビデオ
●中国のクマ施設(胆汁搾取)の実態を指摘したWSPAのキャンペーンビデオ
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